ばれいしょ導入品種「S892」(アスタルテ)
【 要約 】ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ晩生のでん粉原料用のばれいしょ品種である。でん粉価が高く、でん粉重は「紅丸」を上回る。でん粉特性は粒径、りん含量、アミログラム特性とも「紅丸」並を示し良好である。
北海道立根釧農業試験場・研究部・馬鈴しょ科連絡先 01537-2-2004
部会名畑作総合農業作物生産(夏作物)専門育種対象いも類分類普及

【 背景・ねらい 】

 北海道のジャガイモシストセンチュウの発生地域は拡大傾向にあり、被害も増加し ているが、現在、でん粉原料用品種として広く栽培されている「紅丸」および「コナ フブキ」には抵抗性が無い。また、抵抗性の「トヨアカリ」は地上部形態の欠点など から普及が進んでいない。
 このようなことから、ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持つ優れたでん粉原料 用品種が求められていた。

【 情報の内容・特徴 】

  1. 昭和61年にホクレン農業協同組合連合会と北海道澱粉工業協会が共同でオランダ から導入した「 Astarte」に「S892」の名を付し、平成元年より輸入品種等選 定試験等を行なってきた。
  2. 早晩性は「紅丸」より遅い晩生に属する。
  3. 花は赤紫色である。塊茎は卵形で、目はやや浅い。皮色は白黄、肉色は黄白である  。
  4. 上いも平均一個重は「紅丸」よりやや小さい。10a当り上いも重は「紅丸」より少 ないが、でん粉価が高いため、10a当りでん粉重は「紅丸」に勝る。
  5. でん粉特性は粒径、りん含量、アミログラム特性とも「紅丸」並を示し良好である  。
  6. ジャガイモシストセンチュウ抵抗性を持ち、汚染圃場に栽培すると土壌中のシスト 密度を低下させる。
  7. 普及適地は北海道十勝、網走、根釧地域である。

【 情報活用上の留意点 】

  1. 塊茎の肥大およびでん粉価の上昇は遅いので、浴光催芽によって生育の促進を図る  。
  2. 疫病の発生課程は「紅丸」に類似するので、疫病の防除は「紅丸」に準ずる。
  3. 小いもが多いので、掘り残しのないように収穫時に注意する。

【 その他特記事項 】

研究課題名:ばれいしょ輸入品種等選定試験
研究期間 :平成4年(平成元年〜4年)
予算区分 :受託
研究担当者:村上紀夫・松永 浩・千田圭一(以上根釧農試)、浅間和夫、今 友親、
        萩田孝志(以上中央農試)、伊藤 武(十勝農試)、吉良賢二、
        浅山 聡、大波正寿(以上北見農試)、梅村芳樹、西部幸男
        (以上北海道農試)
発表論文等:なし

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.19