てんさい低糖分圃場における糖分向上
【 要約 】窒素吸収量の増大が低糖分を招く原因であり、糖分向上にとって土壌窒素診断による窒素施肥量の適正化が必要であった。また、窒素含有量が高く、窒素施肥量の適正化だけで不十分な場合は、高糖性品種導入と生育調節剤散布によって、ほぼ基準糖度に達した。
北海道立十勝農業試験場・研究部・てん菜特産作物科
    北海道立北見農業試験場・研究部・作物科
連絡先 0155ー62ー2431
0157ー47ー2146
部会名畑作・土地管理専門栽培対象工芸作物類分類指導

【 背景・ねらい 】

 てんさいの糖分取引制度が実施され、ここ数年の根中糖分の全道平均は基準糖度を 上回るか、それに近い良好な結果を示した。しかし、取引数量のうち基準糖度を下回 るものは、年次による変動はあるものの決して少ない数値ではない。これらを技術的 に底上げして基準糖度に達することは低コスト生産にとっても重要な課題である。
 低糖分要因は種々知られているが、そのひとつとして土壌の窒素肥沃度の影響が考 えられ、平成2年度には土壌窒素診断法が普及に移され、窒素施肥の適正化が進めら れている。また、根中糖分向上のため高糖性品種の導入や登熟促進の生育調節剤利用 による新たな技術対応も明らかとなった。
 これらを受けて、土壌窒素肥沃度が高く、基準糖度に達しない低糖分圃場の糖分向 上対策として、これまで明らかとなっている糖分向上技術の総合効果について検討し 、安定的な低糖分対策を図る。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 窒素吸収量の増大が低糖分を招く原因であり、糖分向上にとって土壌窒素診断に よる窒素施肥量の適正化が必要であった。また、熱水抽出性窒素あるいは熱水抽出 無機態窒素含量が窒素診断基準表の上限値を上回る圃場もあったため、窒素施肥量 の適正化だけでは対応できない場合も考えられた。
  2. 窒素施肥量の適正化だけで不十分な場合は、高糖性品種導入と生育調節剤散布に よって、ほぼ基準糖度に達した。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 適正な輪作を行っている圃場に適用する。
  2. 圃場管理台帳の整備を前提とし、本技術を導入する。
  3. 十勝川および利別川流域の一部低地土では熱水抽出性窒素による診断が適合しない場合がある。
  4. 泥炭土地帯は適用外とする。

【 その他 】

試験課題名:てんさい高水準糖分・品質安定か技術試験
予算区分 :受託
研究区間 :平成4年(平成元年〜4年)
研究担当者:大槌勝彦、阿部春記、手塚光明、吉村康弘、吉田俊幸、吉澤 晃、
        梶山 努
発表論文等:なし

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.85