低アミロ小麦の発生要因の解明と対策
【 要約 】低アミロ小麦の発生は成熟期前後の気象条件によって左右され、成熟期以前が低温・多雨(多湿)の場合は、低アミロ小麦となる可能性が高い。成熟期以降は成熟期からの経過日数と降雨が大きく影響し、刈遅れと倒伏は低アミロ小麦の発生を助長する。α−アミラ−ゼ活性の測定によって最高粘度を推測し、低アミロ小麦を仕分けすることができた。
北海道立中央農業試験場 農産化学部 穀物利用科連絡先01237-2-4220
部会名土地管理、畑作専門食品品質対象麦類分類指導

【 背景・ねらい 】

 低アミロ小麦とはアミログラム最高粘度が極端に低下したもので、本道では年次・ 地域により多発し、利用加工上問題となっている。そこで、本試験では低アミロ小麦 の発生原因を解明するとともに粘度低下を軽減するための対策を検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 低アミロ小麦の発生は平成元、2年にはわずかであったが、平成3年では調査試料 の約40%に達した。平成3年に低アミロ小麦が多く発生した地域は、十勝、網走 、胆振、後志、桧山の各支庁であった。
  2. 低アミロ小麦の発生は成熟期以前の気象条件によって大きく左右される。すなわち 、成熟期以前の気象条件が高温、少雨の場合には成熟期時点で低アミロ小麦は発生 せず、低 温・多雨(多湿)では、発生する可能性が高い。
  3. 成熟期以降については、成熟期からの経過日数と降雨が大きく影響し、成熟期後の 1週間までは4日間、2週間までは2〜3日間、2週間以上経過すると1日間の降 雨日数でも低アミロ化する恐れがある。
  4. 低アミロ小麦の直接の原因であるα−アミラ−ゼの活性化は気象条件および休眠の 深浅と関連しており、そのパターンは大きく3つに分けられた。
  5. 収穫時期は大きく影響し、刈遅れほど低アミロ化し易い。また、倒伏は気象条件と 関連し、低アミロ小麦発生を助長する。
  6. α−アミラ−ゼ活性測定法(短縮法:55℃・5分法)による最高粘度の推測から健全小麦と低アミロ小麦の仕分けが可能であった。
  7. 低アミロ小麦の軽減対策としては低アミロ耐性品種の開発が基本となるが、当面は適期収穫、倒伏防止、仕分け収穫・乾燥に努めることが重要と考えられた。

【 成果の活用面・留意点 】
  1. 本試験は、主にチホクコムギを対象として解析した。
  2. 成熟期以前の降雨・平均気温区分は平成3年の結果から導いた。

【 その他 】

研究課題名:低アミロ小麦の発生要因の解明と対策試験
予算区分 :受託
研究期間 :平成4年度(平成元〜3年)
研究担当者:中津智史

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.281