畑地における土壌・作物の違いに対応したかん水指針
【 要約 】春播小麦、馬鈴しょ、てん菜、タマネギについて、効果の大きいかん水期間、かん水開始点(pF2.3〜2.7)を定めた。また、土壌型を3区分(土壌水分供給能区分)して、それぞれの1回当たりかん水量(10〜25mm)を示した。
北海道立北見農業試験場・研究部・土壌肥料科連絡先 0157-47-2146
部会名土地管理,畑作専門栽培対象麦類ほか分類指導

【 背景・ねらい 】

 畑地かんがい用水の有効利用を図るためには、作物の水分反応特性や土壌の水分特 性を考慮した総合的なかん水技術の確立が必要である。本試験では網走管内の主要畑 作物に対して具体的かつ合理的なかん水指針を提示しようとした。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 作物の種類によって収量性に及ぼす水分供給時期の影響は異なっていた。春播小麦 は分げつ始め期から出穂期まで、馬鈴しょは萌芽から7月末まで、てん菜は移植か ら茎葉繁茂期半ばの7月前半まで、タマネギは移植から外葉伸長期の6月下旬まで の各期間を乾燥条件下におくと、生育・収量・品質に与える影響が大きかった。従 ってこの時期がかん水適期間であると考えられた。
  2. 各作物のかん水適期間に、土壌水分を春播小麦ではpF2.5、馬鈴しょではpF2.5、て ん菜ではpF2.7、タマネギではpF2.3より乾燥状態にすると各作物の収量性が低下し たことから、この土壌水分ポテンシャル値をかん水開始点とした。
  3. 1回当たりのかん水量を設定するに当たり、総迅速有効水分量(TRAM)の概念 を用いたが、TRAMの測定値は土壌条件によって異なった。この要因としては土 壌の保水性、透水性、下層からの水分供給の多少が影響していると思われた。
  4. TRAMに影響を与えるこれらの特徴を考慮して、管内に分布する主たる土壌を土 壌水分供給能別に3区分した。またこの区分毎にTRAMを整理し、土壌水分供給 能区分別の1回当たりかん水量を設定した。
  5. 以上の結果を基に、上記4作物について土壌水分供給能区分別のかん水指針を定め た。

【 成果の活用面・留意点 】

 土壌水分の測定は、かん水を行おうとする作物毎に、圃場の代表地点の畦上株間の 深さ10〜15cm(培土した場合は15〜20cm)にテンシオメータ(またはイロメータ等) を設置し、pF値を読み取ること。また、かん水は上からの散水を前提とし、圃場に滞 水しない程度のかん水強度で行うこと。なお本成果の適用は、当面網走管内を対象と する。

【 その他 】

研究課題名:土壌の水分供給能並びに作物水分生理に関する試験
予算区分 :道単
研究期間 :平成4年度(昭和62年〜平成4年)
研究担当者:竹内晴信、松中照夫
発表論文等:Optimum Irrigation Period for Grain Production in Spring Wheat、
        Soil Science and Plant Nutrition、38巻2号、1992。

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.274