アズキ萎ちょう病の発生生態と防除対策
【 要約 】北海道で発生したアズキの急性萎ちょう症の病原菌、発生状況、発生生態、発病機作を解明した。また、本病の抵抗性品種簡易検定法を確立し、有望系統を見いだすとともに、水稲の4〜5年栽培でほとんど発病を抑制できることを認めた。
北海道立中央農業試験場・病虫部・土壌微生物科連絡先 01237ー2ー4220
部会名北海道・作物保護専門作物病害 対象豆類分類普及

【 背景・ねらい 】

 北海道では、水田転換畑対策として1971年にアズキ茎疫病抵抗性品種「寿小豆」が奨 励されたが、1983年頃から「急性萎ちょう症」が発生し大問題となった。そこで、本 病の病原菌、発生状況、発生生態、発病機作を解明し、防除対策の基礎的知見を得る とともに、抵抗性品種探索のための簡易検定法を確立して、総合的な防除法の確立を 目的とする。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 北海道で発生したアズキの急性萎ちょう症はF. oxysporum. f.sp. adzukicolaに よって起こる新病害であることが明かとなり、病名をアズキ萎ちょう病とした。
  2. アズキ萎ちょう病の発生分布は全道調査の結果、石狩、空知、上川を中心に発生 が見られる。しかし、十勝地方では発生していない。
  3. 本菌には3つのレースが存在し、レース3による幼苗検定の結果は圃場検定とよ く一致した。この検定法により、22組み合わせのF5、F6世代1230系統を 調査した結果、855系統を抵抗性と判断した。
  4. 圃場検定は6年間でのべ746系統を供試し、十育127号、十育131号など の有望系統が見いだされた。これらを発生ほ場に作付しても萎ちょう病の発生はま ったくなく、被害を回避できた。
  5. 本菌は土壌中で厚膜胞子を形成し、この厚膜胞子により土壌中の残渣内で223 週以上生存する。また、種子伝染の可能性がある。
  6. シロクローバ、アカクローバ、赤種三尺ササゲは保菌作物と考えられる。
  7. 発病ほ場でも4〜5年水稲を栽培することにより、ほとんど発病を抑えることが できると判断された。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 発病ほ場産の種子は使用しない。未発生地へ罹病アズキを持ち込まない。また、 シロクローバ、アカクローバ、ササゲは移動に注意する。
  2. レース3を用いた幼苗検定法により迅速、大量に抵抗性品種の検定が可能である

【 その他 】

研究課題名:アズキ萎ちょう病の生態解明と防除対策
予算区分 :道費
研究期間 :平成4年度(平成2年〜4年)
研究担当者:近藤則夫(現北海道大学)・角野晶大・田村 修・児玉不二雄
発表論文等:1. Kondo, N. and Kodama, F.: Fusarium oxysporum f. sp. adzukicola,
          causal agent of adzuki bean wilt, and detection of three races
          of the fungus. Ann. Phytopath. Soc. Japan 55:451-457
        2. Kondo, N. et al.: Inheritance of resistance to three races
          of Fusarium oxysporum f. sp. adzukicola in adzuki beanculti
          vars. Ann. Phytopath. Soc. Japan 56:677-679

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.58