ダイズわい化病の発生要因と対策
【 要約 】ダイズわい化病の発病率と6月中に大豆に寄生しているジャガイモヒゲナガアブラムシ有翅虫数との間に高い相関が認められた。発芽直後では粒剤による有翅虫に対する防除効果があまり認められないことから、発芽直後から1週間おきに茎葉散布剤(ピレスロイド系)を3回連続散布することによって、発病率を低下させることができた。また、気象要因等から6月中の有翅虫の発生量および初飛来時期の予測が可能である。
北海道立十勝農業試験場研究部病虫科連絡先 0155-62-2431
部会名病害虫専門作物虫害対象昆虫類分類指導

【 背景・ねらい 】

 ダイズわい化病を引き起こすダイズわい化ウィルスは、ジャガイモヒゲナガアブラ ムシによって永続的に伝搬されるることから、その防除は非常に困難である。このた め、ダイズわい化病の多発要因をアブラムシの個体群動態から解析することによって 、有効な防除時期および防除手段を探索する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. ダイズわい化病の発病率と6月中の寄生有翅虫数との間に高い正の相関が認めら れ、有翅虫数により発病率が決定されると判断された。また、無翅虫(含幼虫)の 寄生が有翅虫の寄生後も続く場合には2次感染率が高まった。
  2. 粒剤の土壌処理と茎葉散布剤との組合せにより、これまで解明できなかった1次 感染率および2次感染率を推定できた。
  3. 粒剤による防除だけでは、有翅虫が大豆の発芽初期に飛来した場合、わい化病に 対する有効な防除手段となり得ないことから、茎葉散布による防除を併せ行う必要 があると判断された。
  4. 茎葉散布による防除では、有翅虫の飛来時期と散布時期との関係が問題であり、 寄生のピーク以降に散布しても防除効果は低く、寄生直前に散布した場合最も防除 効果が高かった。
  5. 積算温度から有翅虫の初飛来時期の予測が可能であった。
  6. 春先等の気象条件から、6月に飛来する有翅虫数の予測が不完全ながら可能であ った。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 発芽直後に飛来するアブラムシ有翅虫を防除するには、茎葉散布剤の集中散布が 有効である。
  2. 大豆のアブラムシに登録のある茎葉散布剤を大豆の生育初期に散布すると薬害の 出るおそれがあることから、注意が必要である。

【 その他 】

研究課題名:ダイズわい化病の総合防除法確立試験
予算区分 :道費(豆基)
研究期間 :平成2年〜4年
研究担当者:大久保利道
発表論文等:大久保利道・橋本庸三(1992)北日本病虫研報43:50-53.
        大久保利道・花田 勉(1992)北日本病虫研報43:54-55.

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.188