ジャガイモYモザイク病の簡易検定法と感染防止対策
【 要約 】ポリクローナル及びモノクローナル抗体を用いた ELISA法によりPVY-TとPVY-O系統の判別を可能にした。PVY-T は薬剤防除のみによってアブラムシによる飛び込み感染を防ぐのは難しく、感染防止のためには、原採種を保毒源から数km以上隔離すること が、最も効果が高い。
北海道中央農試病虫部害虫科、病理科
北見農試病虫科
連絡先01237-2-4220
部会名作物保護専門作物病害・作物虫害対象いも類分類指導

【 背景・ねらい 】
 ジャガイモYウイルス(PVY) は古くからばれいしょの重要病害の一つであったが、 1980年代に入り、新系統( PVY-T)が急速にまん延した。移出用ばれいしょに保毒種イ モが混混在すると、近接タバコ園で被害を発生するなどの問題があるため、無病種ば れいしょ生産のための簡易診断法の開発及び防除対策の確立が強く要望されている。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 現地実態調査では、PVY-T、-Oの両系統ともに、石狩、空知、後志、上川支庁管内 で発生が多かった。高汚染地帯では、使用種いもの保毒率が高い。
  2. 主な品種が示す病徴は、えそ、えそ斑点、モザイク、れん葉であるが、病徴によ るTとOの両系統の判別は不可能であった。また、一見無病徴と思われる株からも T系統が多数検出された。
  3. T及びO系統のポリクローナル、モノクローナル抗体による ELISA検定により両系統を判別する 簡易検定法を確立した。塊茎では、発芽した芽でのみ検定が可能であった。
  4. 感染時期は、モモアカアブラムシ有翅虫の黄色水盤による誘引消長と寒冷紗被覆 処理試験の結果から、栽培全期間(6〜10月)であることが明かとなった。
  5. 播種時に保毒株を一定の割合で混植した場合、圃場内感染によって収穫時の保毒 率は播種時の約3倍以上になり、現地でもほぼ同様の関係が認められた。また、保 毒源から数百m離れても飛び込み感染が認められ(図3)、感染を防止するには数km 以上の隔離が必要と推定された。
  6. 防除対策として検討したうち、寒冷紗被覆は効果がみられた。 イミダクロプリド粒剤の播種時処理と水和剤の2回の茎葉散布の体系防除は、優れた防除効果があった。 しかしながら、 PVYに対しては、圃場内感染防止効果は少しみられたものの、飛び 込み感染は防げなかった。

【 成果の活用面・留意点 】

 原採種圃の設置上の参考になる。

【 その他 】

研究課題名: ジャガイモYモザイク病の簡易検定技術と防除対策
予算区分 : 道 費
研究期間 : 昭和62年〜平成3年
研究担当者: 萩田孝志、柿崎昌志、鳥倉英徳、梶野洋一
発表論文等: 鳥倉英徳(1983) 北日本病虫研報 34:47-49.
         萩田孝志・梶野洋一・赤井 純(1988) 北農 55:30-39.
         柿崎昌志(1989)  北日本病虫研報 40:126-127.
         鳥倉英徳・兼平修・奥田裕志(1989) 北日本病虫研報 40:128-131.
         奥田裕志・鳥倉英徳(1990) 北日本病虫研報 41:154-156.
         鳥倉英徳(1990) 北日本病虫研報 41:150-153.
         大島一里・Alice Kazuko Inoue・石川陽・四方英四朗・萩田孝志(1990)
         日植病報 56:508-514.

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.195