食用ゆりりん茎さび症の病原菌と防除対策
【 要約 】  食用ゆりりん茎さび症(乾腐病、輪紋病)の病原菌の種名を明らかにするとともに 、本病の北海道における発生実態とチオファネートメチル耐性菌の分布状況を明らか にした。また、代替農薬による種球浸漬処理による防除法を確立した。
北海道立上川農業試験場 病虫科連絡先 0166ー48ー2244
部会名北海道・作物保護専門作物病害対照茎葉菜類分類指導

【 背景・ねらい 】
 食用ゆり生産球のりん片が黄褐色〜濃褐色の汚斑や輪紋症状を生じたり、組織が腐 敗崩壊するものが多発し、著しい品質フ劣化が生じた。また、生育期間中に葉が急激 に萎凋垂下し、枯死する立枯症状が北海道全域に発生し問題となった。  一方、現行唯一の防除薬剤であるチオファネートメチル剤の防除効果の低下が確認 され、生産現場より早急に防除対策の確立が望まれている。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 食用ゆりから、病原性の認められる2菌種を分離した。Fusarium sp.は、形態的 特徴からFusarium oxysporumと同定され、食用ユリ分離菌はゆり科作物に対する病 原性の違いから、F.oxysporum f.sp.liliiとされ、乾腐病と命名された。Cylindro carpon sp.は形態的特徴および生育適温が20゚Cと低温であることからCylindrocarp on dest ructans (Zins.) Scholten と同定され、輪紋病と命名された。
  2. 1986〜1990年に道内の 14市町村計119地点から採取した罹病球より分離された乾 腐病菌計441菌株、輪紋病菌計231菌株について、チオファネ−トメチル剤に対する 耐性検定を行った結果、乾腐病菌で約 85〜100%、輪紋病菌で約60〜70%の割合で 耐性菌が道内各産地に広範に分布していた。
  3. 罹病種球を植付けた場合には健全種球に比較して発病時期が早く、発病度も高か った。
  4. 発病に及ぼす土壌水分の影響を検討した結果、土壌水分が高いほど発病は少なく 、乾燥した土壌で発病が多くなる傾向が認められた。
  5. 種球浸漬剤として有機銅( 8-オキシキノリン銅)水和剤50倍の植付前種球消毒はりん茎 の発病を低下させた。

【 成果の活用面・留意点 】
 健全種球を使用する。栽培ほ場は適湿に保ち、極端な乾燥は避ける。養成球栽培時 の土壌消毒は成球の発病軽減に有効である。

【 その他 】

研究課題名:食用ゆりのりん茎さび症防除対策試験
予算区分 :道 費
研究期間 :昭和63年〜平成3年
研究担当者:田中文夫、青田盾彦
発表論文等:田中文夫、近藤則夫、土屋貞夫、坪木和男(1987):食用ゆりのりん茎さび
        症の病原菌とそのチオファネートメチル感受性、日植病報、54(1):118
        田中文夫、長谷川進、土屋貞夫、児玉不二雄(1989):食用ゆりの乾腐
        病(新称)および輪紋病(新称)とその病原菌、日植病報、55(4):501
        近藤則夫、田中文夫、児玉不二雄(1990):Cylindrocarpon destructans
        による食用ユリの生育阻害、日植病報、56(1):142

          「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.227