野菜のセル成型苗生産供給システムと経済評価
【 要約 】  セル成型苗の生産費は既存苗と同程度であるが、セル成型苗の機械利用による移植作業時間はポリポット・手移植の48%に節減される。専門プラントでの生産費は固定費に規定され、苗の平準的供給が可能なプラントでの生産費低下が認められた。
道立中央農業試験場・経営部・経営科、農業機械部・機械科、
             園芸部・野菜花き一科
連絡先01237-2-4220
部会名農業経営専門経営、作業、栽培対象葉茎菜類分類指導

【 背景・ねらい 】
 野菜産地におけるセル成型苗に対する関心は高く専門プラント導入の動きもみられる。しかし、セル成型苗の経済性に関する成績は乏しいため農家生産における生産費と専門 プラントにおける生産費を明かにし、産地においてセル成型苗供給システムを組む上で の参考とする

【 成果の内容・特徴 】

  1. 農家生産におけるキャベツ苗1本当たり生産費は、セル成型苗:6.5円、ポリポット苗:6.5円、ペーパーポット:7.5円である。ペーパーポットの生産費が高い結果である が有意な差ではなく、苗生産費の面ではセル成型苗は既存苗と相違無い。
  2. 10a当たり移植作業時間は、セル成型苗・機械移植:5.8hr、ポリポット・手移植:12.2hr、ペーパーポット・手移植:11.2hrであり、移植機利用による省力性が認められる。 10a当たり移植作業費は、セル成型苗・機械移植:12,367円、ポリポット・手移植: 15,250円 であり移植植作業費はセル成型苗・機械移植の方が少ない。
  3. 苗生産の専門プラントでの運営実態を踏まえて、産地規模100haのキャベツ団地を想 定し4〜 7月の期間に平準的に播種する「平準型」のプラントと特定の月に全体の50 %を播種する「集中型」のプラントにおける苗1本当たり生産費を試算すると、平準 型:9.22円、集中型:12.88円である。 50%の補助金を利用する場合には平準型: 7.10円、集中型:9.19円である。生産費は プラントでの固定費に規定されることが認 められた。
  4. 苗需要の時期が集中する場合について、簡易なパイプハウスを用いる小規模プラン ト(キャベツ団地規模:25ha)における苗1本当たり生産費は6.97円であり、大規模 プラントの場合と比較すると生産費は低い。したがって苗の需要時期が集中する産 地においては、生産費形成の面では小規模なプラントでの苗供給が有利であると考 えられた。

【 成果の活用面・留意点 】
 セル成型苗の生産供給システムは産地の実状に応じた多様なシステムが考えられる。 セル成型苗の導入にあたっては産地の目標を明確にした上で供給システムを組む必要が ある。

【 その他 】

研究課題名:野菜のセル成型苗生産供給システムと経済評価
予算区分 :道単
研究期間 :平成4年度(平成4年)
研究担当者:河野迪夫、金子剛、桐山優光、宮浦邦晃、田中靜幸
発表論文等:なし

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.406