加工用だいこん導入による農業所得の安定化機能
【 要約 】 はくさいを基幹とする10ha規模の野菜作経営において、夏取りはくさい後に加工用 だいこんを2ha作付することにより野菜価格の低下年においても550万円以上の農業所 得を確保し、加工用だいこんは基幹野菜の所得減少緩和の機能を果たす。
道立中央農業試験場・経営部・経営科連絡先 01237-2-4220
部会名農業経営専門経営対象根菜類分類指導

【 背景・ねらい 】
 加工用野菜の経済的特徴の一つである価格の安定性が野菜の価格低下時における農 業所得の低下を緩和すること、また加工用だいこんが有する所得形成力を明かにし、 加工用野菜の導入を促進するための資料とする。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 道内の青果加工場で工場数が最も多いのは漬物業であり、零細規模の工場が圧倒的 である。しかし、調査対象企業は零細ではあるが、府県の大手卸売や大手メーカーを経 由して製品流通させており販路は安定している。漬物業においては増産を計画して いる企業も認められるが、原料供給の不安定性から工場操業を一時的に停止する場 合もあり、原料供給の安定性が求められる。
  2. 秋取りの加工用だいこんの10a当り粗所得は、小麦・小豆を上回り、また、所得の 年次間変動は少なく安定している。はくさいを基幹とする10ha規模の野菜作経営に おいてははくさいの価格変動により農業所得が大きく変動する。しかし、加工用だ いこんを約 2ha作付すると、はくさいの価格低下年においても 550万円以上の農業 所得の確保が可能である。
  3. 加工用だいこんの10a当り粗所得は野菜後作の10月取りはくさいの所得を上回り土 地利用上でもはくさい・キャベツの年2作栽培よりも合理的であり、はくさいを基幹 作目とする野菜作経営への加工だいこんの導入は積極的な意義を有する。
  4. 加工用・生食用だいこんの所得形成力を線形計画法を用いて分析した結果では、現 状の契約価格(22〜25円/本)のもとでの加工用だいこんの所得形成力は生食用栽 培に比して弱く、生食用におき変わり加工用だいこんが作付られためには本当り26 円以上への価格の引き上げあるいは原料規格の緩和が必要であると考えられた。

【 成果の活用面・留意点 】
 野菜作経営での所得安定部門として、また、生食用だいこんの所得水準との比較か ら加工用だいこん導入を検討する場合の参考とする。

【 その他 】

研究課題名:加工原料野菜の経営的評価と産地形成
予算区分 :道単
研究期間 :平成4年度(平成2〜4年)
研究担当者:河野迪夫
発表論文等:なし

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.404