F1雌牛を利用した効率的牛肉生産システム
【 要約 】 乳用種に肉専用種を交配して生産されたF1雌牛を利用して、早期種付けおよび2 卵移植技術を取り入れた2産取りの牛肉生産システムを提示した。雌牛100頭たり、 モデルの最終合計肥育頭数は260頭、雌牛の最終月齢は42か月齢となった。
新得畜産試験場・研究部・肉牛飼養科、肉牛育種科連絡先 01566-4-5321
部会名畜産専門飼育管理対象家畜類分類指導

【 背景・ねらい 】
  乳用牛のうち低能力牛あるいは初産牛に肉専用種を交配し、生産されたF1雌牛を 繁殖用として利用する方法は、新たな肉資源の開発と牛肉生産効率の改善策として期 待できる。これに早期種付けや新しい増殖技術として期待されている2卵移植技術を 取り入れることができれば、資源拡大は更に進むであろう。
 そこで、ここでは肉専用種にアンガス(A)を用いてこれら技術を組み入れた2産 取り肥育の生産システムを設定し、F1雌牛(AD種)の繁殖性、哺育性、2産後の 肥育、子牛の育成・肥育の一連の試験成績から、設定したシステムの有効性と問題点 を検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. F1雌牛(AD種)の性成熟は平均12.2か月齢、受胎は平均12.8か月齢であった。 初産後2卵移植による3回までの累積受胎率は83.3%、受胎月齢25〜28か月齢であ った。
  2. F1雌牛の初産次子牛生産率は、受胎頭数に対して89.7%であった。また、2産次 では移植頭数に対する流死産率が17%と高く、子牛生産率は移植頭数に対して 100 %(受胎頭数の120%)であった。
  3. F1雌牛の1日当たり哺乳量は初産次で10kg前後、2産次で20kg前後と高かった。 このため生産子牛の哺乳期の発育はともに日増体量1.1〜1.2kgと良好であった。
  4. F1雌牛の2産後肥育は離乳後4か月の肥育で、終了時 44か月齢、体重758kg、日 増体量1.53kg、枝肉歩留56.7%、枝肉格付B-2であった。
  5. 初産次F1クロスおよび2産次移植による生産子牛は19か月齢の肥育で、出荷体重 がそれぞれ700および600〜650kgであった。移植子牛では肉質等級3の割合が 70% であった。
  6. これらの成績から、設定したシステムの修正を行い、モデルを提示した。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 性成熟は組み合わせ品種によって異なるので、システムの実行において種付け月齢 の設定に注意する。早期種付けでは難産防止の点から交配種雄牛の選定に注意する
  2. F1雌牛および生産子牛の枝肉成績は交雑組み合わせによって異なる可能性がある

【 その他 】

研究課題名:F1雌牛を利用した効率的牛肉生産システムに関する試験
予算区分 :道単
研究期間 :平成4年度(昭和62〜平成 4年)
研究担当者:佐藤幸信、本郷泰久、杉本昌仁、川崎 勉、田村千秋、所 和暢
発表論文等:

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.336