肉牛放牧における地下茎型イネ科草地の植生推移、牧養力および増体効果
【 要約 】 低施肥、肉牛放牧条件下で地下茎型イネ科牧草の草種特性を明らかにした。ケンタ ッキーブルーグラスの家畜生産性はha当たり3.5頭、500CD、DG0.8〜0.9kgと優れた。 レッドトップの家畜生産性はha当たり2.5頭、350CD、DG0.7〜0.8kgであった。
北海道立新得畜産試験場 研究部 草地科連絡先 01566-4-5321
部会名草地専門栽培対象牧草類分類指導

【 背景・ねらい 】
 ケンタッキーブルーグラスやレッドトップなどの地下茎型イネ科牧草は、採草地に おいては低級牧草とされ、草地更新の指標作物にまでされている。しかし、これら地 下茎型イネ科牧草は耐踏圧性や耐侵食性に優れ、放牧に適した特性を備えている。ま た、ケンタッキーブルーグラスは公共草地などの放牧地に侵入優占し、安定した植生 相を維持している例が多くみられる。
 そこで本試験では、地下茎型イネ科牧草について肉牛を対象家畜とし、低労力、低 施肥条件下での草種特性を明らかにし、すでに地下茎型イネ科草種が侵入優占した公 共草地および立地条件が不良な未利用地の有効活用を図ろうとした。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 地下茎型イネ科牧草4草種の草種特性を表1に示した。とくに、ケンタッキーブル ーグラスは、放牧用草種として優れた特性を示した。
  2. ケンタッキーブルーグラス草地は、500kg換算頭数でha当たり3.5頭、年間収容頭数 は 500頭の能力があり、その際の増体は良好であることがわかった。既存の放牧地 に優占しているケンタッキーブルーグラス主体草地は利用率70%程度の輪換放牧を 行えば有効に活用できるであろうと考えた。
  3. レッドトップ草地は、播種後の植生の確立がきわめて早い特徴があった。夏期に茎 が木質化すると再生力が低下し、かつ、家畜の増体効果が低下した。レッドトップ 草地の能力は、500kg換算頭数でha当たり2.5頭、年間収容頭数は 350頭程度が上限 で、その際の増体は平均的な値が得られた。また、レッドトップ草地は年とともに 植生が衰退し、5年目には被度が50%程度に低下した。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 地下茎型イネ科牧草が優占した公共草地および不良な立地条件に造成する放牧専用 草地に適用できる。
  2. 本試験成績は、アバディーンアンガス去勢育成牛を用いて得られたものである。

【 その他 】

研究課題名:地下茎型イネ科牧草の有効利用に関する試験
予算区分 :道単
研究期間 :平成4年度(昭和63年〜平成4年)
研究担当者:澤田嘉昭、佐藤尚親、出口健三郎、鳥越昌隆

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.314