季節繁殖・集約放牧組合せにおける乳牛の飼養技術とそのモデル化
【 要約 】 ペレニアルライグラス主体草地を利用した早期放牧育成および乳牛の季節繁殖・集 約放牧組合せ飼養はゆとりのある豊かな酪農経営を達成するために極めて効果的な技 術である。
北海道立天北農業試験場 研究部 草地飼料科連絡先 01634-2-2111
部会名家畜草地合同部会専門飼育管理対象家畜類分類指導

【 背景・ねらい 】
 天北地域におけるペレニアルライグラス草地を利用した季節繁殖・集約放牧組合せ 乳牛飼養技術について精査・解析し,ゆとりのある豊かな酪農経営の確立を図る。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 経営概況
     季節繁殖・集約放牧酪農家の草地面積は52.5ha,経産牛頭数は37.3頭であり,対 照の通年繁殖・通年貯蔵粗飼料給与酪農家と同程度の経営規模であった。
  2.  2.集約放牧技術
     季節繁殖・集約放牧酪農家における放牧地および兼用地の牧区数はそれぞれ29,14であった。放牧地はすべてペレニアルライグラス主体草地であり,経産牛における年間利用回数は12.7回であった。また,入牧時草丈は22cmであった。
  3. 早期放牧育成とその成果
     生後3〜4か月で3週間の馴致をしたのち6月に放牧を開始し,濃厚飼料無給与 で育成した。冬期間は牧草サイレージ主体で屋外で飼育した。育成2年目の放牧期 も濃厚飼料は無給与とした。1年目の冬期間に育成牛の体重はホル協下限値を下回 ったが,育成2年目の放牧期に著しく増体し標準値に達した。その繁殖および泌乳 成績は良好であった。
  4. 乳牛の季節繁殖・集約放牧組合せ飼養とその成果  分娩時期を1〜3月に集中し,4月下旬〜5月上旬に放牧を開始し11月上旬ま で昼夜放牧した。放牧草の年間摂取量は乾物で2.57t,TDNで1.81tであり,全粗 飼料に占める割合は乾物で52%,TDNで57%であった。濃厚飼料の給与量は乾物で 2.3tであった。繁殖および泌乳成績は良好であり,疾病の発症率は低かった。
  5. 労働時間
     基幹従事者1人当たり,および1戸当たりの年間労働時間は,季節繁殖・集約放 牧酪農家において少なかった。
  6. 経営成果
     放牧草,乾草および牧草サイレージのTDN1kg当たり生産費は,それぞれ17.9, 45 .3および 44.2円と低く,所得率は49.6%,所得は1,532万円と高く,経営成果は極め て良好であった。
  7. 以上の成果を基にして集約放牧技術,早期放牧育成技術および乳牛の季節繁殖・ 集約放牧組合せ飼養技術のモデルを作成した。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. ペレニアルライグラス主体放牧草地を利用する酪農家に適用できる。
  2. 早期放牧育成においては特に放牧馴致を十分に行う。

【 その他 】

研究課題名:季節繁殖と放牧組合せにおける乳牛の低コスト飼養管理モデルの策定
予算区分 :道費
試験期間 :平成4年度(平成2〜4年)
研究担当者:坂東 健、川崎 勉、寒河江洋一郎、石田 亨、裏 悦次
発表論文等:

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.311