アルファルファの根部貯蔵養分濃度の推移と気温の関係
【 要約 】 アルファルファの根部貯蔵養分(TNC:非構造性炭水化物)濃度は刈取りにより減少す るが、1番草刈取り後ではほぼ400゚Cの積算温度{(日平均気温 -7゚C)の積算値}で再 び回復することがわかり、地域により早刈りできることが示唆された。
北海道立天北農業試験場 土壌肥料科連絡先 01634-2-2111
部会名草地専門肥料対象牧草類分類研究

【 背景・ねらい 】
 アルファルファ草地の管理上重要な刈取りスケジュールに関して、北海道内におい ても栽培試験が行われてきたが、気象条件の異なる場合の検討が望まれている。気象 条件の違いによる1番草の生育ステージのずれはわずかであるが2番草以降は地域間 で異なり、栄養生理的な面からも関連づけて考える必要がある。  再生のために重要な役割を担う根部貯蔵養分の推移に注目し、各地域間で適用可能 な刈取り管理技術確立のための資とする。

【 成果の内容・特徴 】
 各地アルファルファ草地において、根部貯蔵養分 (TNC)濃度の推移を測定した結果 、2番草生育期間については気温の影響が大きく、刈取り後の TNC濃度の回復はいず れの地点においてもほぼ400゚Cの積算温度を要した。

  1. 人工気象室での実験からアルファルファの生育下限温度は約 7゚Cと推定された。
  2. 気象条件の異なる現地アルファルファ草地(経年数3年以上、平均気温の高い順 に滝川、名寄、美深、中頓別、浜頓別(天北農試)、猿払の6市町村)において 定期的に根部を採取しTNC濃度を測定した。1番草刈取り後にTNC濃度が減少し、 再び刈取り時の水準に回復するのに要した日数は各地で異なり、気温の高い地点 ほど短かった。
  3. 各地のTNC濃度回復に要した期間について、日平均気温から生育下限温度の7゚Cを 差し引いた値を積算すると、いずれの地点もほぼ 400゚C前後で一定となる事が明 らかになった。
  4. 以上のように、TNC濃度が1番草刈取り後の積算温度400゚C前後で回復したことは 、浜頓別における既往の栽培試験の結果(2番草生育期間40日)と比較するとほ ぼ一致し、この時点で刈取ることは妥当であった。一方、より気温の高い地域に おいて、TNC濃度回復に要する積算温度400゚Cの観点からみると、その日数が短く なるために 早刈りのできる事が示唆された。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 気象条件の異なる各地域における刈取り回数・時期の設定に応用できる。また、 土壌水分、越冬性などの影響を加味する事により総合的な利用管理技術の確立が可 能となる。
  2. 技術確立のためには、収量・越冬性等に関する実証試験が必要である。

【 その他 】

研究課題名:マメ科牧草の窒素固定利用による低コスト管理
予算区分 :指定試験
研究期間 :平成4年度(昭和59年〜平成5年)
研究担当者:小宮山誠一、松原一實、熊谷秀行
発表論文等:小宮山誠一、松原一實、熊谷秀行、井内浩幸(1992):アルファルファ
       根部貯蔵養分の蓄積と温度との関係.土肥講要集 38,251