アブラムシ類殺虫細菌の収集・選抜と効果
【 要約 】 アブラムシや植物から分離した細菌1100株の中から、噴霧接種法と経口接種法によってアブラムシに病原性を示し高い殺虫効果を示す2菌株(Pseudomonas fluorescens および腸内細菌科菌種)を選抜した。
北海道立中央農業試験場・病虫部・害虫科連絡先 01237-2-4220
部会名作物保護専門作物虫害対象昆虫類分類研究

【 背景・ねらい 】
 現在、アブラムシの防除においては、様々な農作物で殺虫剤が盛んに使用されてお り、その結果、殺虫剤抵抗性を獲得したアブラムシが出現している。このような弊害 を回避するためには、天敵微生物を利用した防除法の開発も重要とされている。そこ で人畜に安全で環境にやさしい微生物防除法の素材として利用するために、殺虫効果 の高い細菌の探索と選抜を行う。

【 成果の内容・特徴 】

  1. アブラムシに細菌を接種する方法として噴霧接種法と経口接種法を考案し、アブ ラムシに対して病原性を示す細菌をスクリーニングした。
  2. 細菌582菌株の中から室内、温室、ハウス、露地での噴霧接種によってジャガイモヒゲナガアブラムシ、モモアカアブラムシ、ワタアブラムシ、ムギクビレアブラムシに殺虫効果を示す菌株(F2株)を選抜した。細菌518菌株の中から室内での経口接種によってジャガイモヒゲナガアブラムに殺虫効果を示す菌株(K3株)を選抜した。
  3. F2株は Pseudomonas fluorescensと同定され、K3株は腸内細菌科に属する菌 種であることが判明した。
  4. F2株とK3株の培養上清と沈澱をそれぞれ噴霧接種と経口接種すると、F2株 上清の噴霧接種、F2株とK3株沈澱の経口接種が高い死虫率を示した。
  5. K3株の経口接種の場合、虫体内接種細菌濃度が濃いほど死亡までに要する時間 が短かったが、死亡時の体内細菌濃度は死亡までの時間にかかわらずほぼ一定であ り、供試成虫が死亡するまでに産んだ幼虫の死亡個体からも接種細菌が再分離され た。
  6. K3株培養液の噴霧接種はモモアカアブラムシに対して殺虫効果が認められなかったが、 培養液に庶糖を添加して噴霧接種すると高い殺虫効果が認められた。

【 成果の活用面・留意点 】
 F2株とK3株はアブラムシに対する微生物防除の素材として有用である。F2株 が産生する物質は微生物由来の殺虫剤の素材として有用である。

【 その他 】

研究課題名:アブラムシ類殺虫細菌の探索とその実用化に関する試験
予算区分 :道費
研究期間 :平成4年度(昭和63〜平成4年)
研究担当者:橋本庸三
発表論文等:橋本庸三(1991):ジャガイモヒゲナガアブラムシより分離された細菌
        Pseudomona fluorescens H86299株について 応動昆 第35巻 3:255-258

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.191