シミュレーションモデルによるヒメトビウンカの各種防除法の効果推定
【 要約 】 ヒメトビウンカの発生予察を行うための発生予測シミュレーションモデルを作成し た。またこのモデルを発展させて防除効果シミュレーションモデルを作成し、処理法 と薬剤のタイプを組み合わせた防除の効果推定ができるようにした。
北海道立上川農業試験場研究部病虫科連絡先 0166-48-2244
部会名作物保護専門作物虫害対象稲類、昆虫類分類指導

【 背景・ねらい 】
 ヒメトビウンカ(吸汁害、イネ縞葉枯病媒介)は、発生量の多い重要害虫で防除回 数も多い。本種の防除をより的確かつ効率的なものに改善するため、シミュレーショ ンモデルを作成し、本種の発生予測と最適防除法の推定を行う。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 発生予測モデル(無防除、LASTRISS ver.1)
    1. 圃場試験、室内実験等によって生長、産卵、死亡、移動、休眠などのパラメーター を推定し、本種の年間発生消長をシミュレートするダイナミックモデルを作成した
    2. このモデルによって発生時期予測(全道各地)、発生量予測(上川以外は平年比のみ) のほか年次変動計算、仮想気象条件下の発生予測、吸汁害発生密度の事前予測等も 可能になった。

  2. 防除効果モデル(LASTRISS ver.2)
    1. 本種に対する種々の防除法について、対象ステージ(卵、幼虫、成虫)別の殺虫率とそ の残効、産卵抑制効果等を査定し、パラメーターを設定した。茎葉散布、育苗箱施 用および水面施用は、薬剤により殺虫率とその残効消長が大きく異なったので、そ れぞれ2〜3のタイプに類別して設定した。
    2. モデルによる計算値は一般圃場における発生推移と一致し、モデルの適合性が示さ れた。
    3. モデルによるシミュレーションの結果、効果の高い育苗箱施用によって出穂期以前 の他の防除を省けること(表1)、異常な多発条件下でも適期適剤の散布によって夏 の吸汁害防止が十分可能であること(表2)など、本種の防除法について多くの情報 が得られた。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 本モデル (ver.1)により本害虫の発生消長、吸汁害発生などの予測が可能である。
  2. 本モデル (ver.2)を活用して本害虫の発生に応じた防除法、防除時期、防除薬剤を 選択することによって現行より的確かつ効率的な体系的防除を行うことが可能であ る。

【 その他 】

研究課題名:ヒメトビウンカと稲縞葉枯病の新防除体系確立試験
予算区分 :道費
研究期間 :平成4年度(平成元年〜4年)
研究担当者:八谷和彦、梶野洋一、中尾弘志、秋山安義
発表論文名:未発表

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.186