乳牛の超音波画像解析による生殖器の動態と養分充足
【 要約 】 超音波断層装置は乳牛に苦痛を与えず、小型卵胞を含めた卵胞数や内部構造および 子宮の修復経過を詳細に観察することができた。泌乳初期のTDN充足状態と卵巣機 能には大きな関係がみられた。
根釧農業試験場・研究部・酪農第二科連絡先 01537-2-2004
部会名畜産専門繁殖対象乳用牛分類指導

【 背景・ねらい 】
 超音波断層装置による生殖器の診断精度を検討し、分娩後の子宮の経時的な修復状 況や卵胞の発育状況を詳細に観察するとともに、泌乳初期の栄養充足状態が繁殖機能 におよぼす影響について検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 卵胞の大きさが 2mm程度まで判別でき、10mm以上では摘出した卵巣を直接観察した 結果とほとんど差がなかった。
  2. 子宮は内側および外側の2本の輪郭線に囲まれたエコーレベルの低い円筒形あるい は楕円形として描出された。外側輪郭線は子宮の血管層を、内側輪郭線は子宮の内 膜を表した。
  3. TDN充足率は主に飼料摂取量の変化により毎日変動し、分娩後減少するが1週目頃 から増加し10〜20日目に 80%を越え、一旦減少するが30〜40日目に100%を越えるⅠ 型、減少期間が 2〜3週と長く、その後75〜80%の小ピークを形成するⅡ型、臨床型 乳房炎などで減少が 50%以下となり、その後の回復により20日頃に小ピークを形成 するⅢ型および65〜80%の範囲で変動するⅣ型の4つのパターンに大別した。
  4. TDN充足率と繁殖成績では、初回排卵までの日数がⅠ型で15.9日と最も短く、Ⅳ型 で47.7日と最も長かった。初回排卵までの最大卵胞数が多いほど、排卵までの日数 が長く、特に初回排卵の遅延したⅣ型では最大卵胞数が 3.3個と多かった。最終的 にⅠ型およびⅡ型ではほとんど受胎したが、Ⅲ型およびⅣ型では受胎率が、それぞ れ50.0%、60.0%と不受胎が多く、また、Ⅳ型では受胎までの日数が 120.0日と長か った。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. TDN充足率の回復が早い牛は受胎性も高いが、TDN充足率の回復が遅い牛は受胎性が 悪いので、TDN摂取量を大きくする工夫が必要である。
  2. 分娩時、難産や起立不能など異常がある場合、あるいは乳房炎や蹄病に罹患した場 合など、栄養以外のストレスなどの要因も分娩後の繁殖機能に影響する。

【 その他 】

研究課題名:放牧期分娩牛の飼養法改善による繁殖性改善に関する試験
予算区分  :道 単
研究期間  :平成4年度(平成1〜4年)
研究担当者 :塚本 達、八田忠雄、上村俊一、山田 渥、扇  勉、高橋雅信

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.329