水稲「空育139号」(ゆきまる)の栽培特性と技術対策
【 要約 】 早生・良食味水稲「空育139号」の収量がやや低いなどの欠点を改善するには、幼穂形成期の茎数の増加が重要である。そのためには側条施肥の導入が有効である。また、成苗栽培ではとくに栽植密度、育苗日数について栽培基準の厳守が重要である。
中央農業試験場・稲作部・栽培第一科
上川農業試験場・研究部・水稲栽培科
連絡先 0126-26-1518
部会名稲作専門栽培対象稲 類分類指導

【 背景・ねらい 】
 「空育139号」は早生・良食味の新品種であるが、低収性、短稈、穂揃い性不良の 欠点があるため、これら欠点の要因解明と技術対策の確立を目的とする。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 「空育139号」の移植から幼穂形成期までの日数は「空育125号」、「きらら 397」より短い。
  2. 幼穂形成期の茎数は「空育125号」とほぼ同じで、「きらら397」より少なく 成苗でとくに少ない。幼穂形成期の茎数が少ないほど、有効化する遅発分げつが多 い。
  3. 稈長は「空育125号」、「きらら397」より短くとくに成苗で短い。幼穂形成 期の茎数が500本/㎡以下では稈長は50cm以下と短くなる可能性が大きい(図1)。
  4. 穂揃い日数は「空育125号」並で、「きらら397」より長く、とくに成苗で長 い。穂揃い日数は幼穂形成期の茎数が少ないほど長い。
  5. ㎡当たり籾数が多いほど増収し、不稔歩合が高い場合には稔実籾数が多いほど増収 する。収量性の向上には㎡当たり籾数を確保することが重要である。
  6. 幼穂形成期の茎数が 300〜400本/㎡と少ない場合には㎡当たり籾数は3万粒/㎡以下 のことが多い(図2)。㎡当たり籾数3万粒/㎡を目標とすれば、幼穂形成期までの 茎数を500本/㎡程度確保することが重要である。
  7. 側条施肥は初期生育の向上に有効で、幼穂形成期の茎数は増加し、㎡当たり籾数は 2万9千粒/㎡以上を確保し、収量向上に効果がある。また、稈長の適性化にも有効 である(表1)。
  8. なお、栽培基準で示される栽植密度(中苗25株/㎡以上・成苗22〜25株/㎡)以下の 疎植では幼穂形成期の茎数が減少し、収量は低下する。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 水稲地帯別栽培指標を厳守する。
  2. 成苗ポットの育苗日数は35日を限度とし、育苗後半の高温にとくに注意する。
  3. 健苗育成および防風対策を励行し、初期生育の促進に努める。

【 その他 】

研究課題名:水稲新品種候補系統の栽培特性解明試験
予算区分 :道単
研究期間 :平成5年度(平成3年〜5年)
研究担当者:古原 洋、五十嵐俊成
発表論文等:水稲新品種「空育139号」の収量指数および稈長に栽植密度が及ぼす影
        響育種・作物学会北海道談話会会報、34、1993

        「平成6年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.79