短稈ヒマワリの畦幅、栽植密度および窒素施肥量
【 要約 】 短稈ヒマワリの栽培にあたっては畦幅は60cm程度、栽植密度は13000〜16000 本/10aで、子実重および収油量の多収が得られる。また、多窒素栽培は菌核病の発 生を助長するので、窒素施肥量は普通種と同様6kg/10a程度とする。
北海道立北見農業試験場・研究部・作物科連絡先 0157-47-2146
部会名畑作専門栽培対象工芸作物類分類指導

【 背景・ねらい 】
 北海道におけるヒマワリ栽培は昭和55年に始まり、作付け面積は上川地方を中心として徐々に拡大し、平成3年には197.9haに達した。しかし、ヒマワリは茎長が長いため、倒伏や防除作業等の圃場作業上に問題があり、最近は栽培のしやすさという観点から短稈ヒマワリの作付け面積が急速に増加しつつある。このような状況のなかで、短稈ヒマワリの栽培法の確立が強く要望されてきた。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 普通種の標準畦幅である70cmに対して、生育量の少ない短稈種について畦幅を狭くして、より効率的な子実及び油生産の可能性を検討したが、畦幅50cmまで狭くすると生育の旺盛な年には、むしろ総重、子実重、収油量の減少を招いた。しかし60cm程度であれば、株間競合が減少することによって茎長がやや短くなり、倒伏がわずかではあるが少なく、総重は増加し、生育量の少ない年には子実重や収油量が増加した。
  2. 普通種の標準窒素施肥量である6kg/10aに対して、短稈種についての最適窒素施肥量を検討したが、3kg/10aでは明らかに頭花径、総重、子実重が減少した。また、9kg/10a以上施用すると油分が低下し、菌核病が明らかに増加し、特に発生の多い年には  総重、子実重、収油量の減少を招いた。
  3. 普通種の標準栽植密度である7000本/10aに対して、短稈種について密植による増収効果を検討したが、13000〜16000本/10aで総重、子実重、収油量の多収が得られた。
  4. 畦幅や栽植密度の違いによって、菌核病の発生程度が異なる場合があったが、栽植密度13000〜16000本/10a、窒素6kg/10aの組合せで発生は少なかった。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 短稈ヒマワリの栽培にあたっては、畦幅は60cm程度、栽植密度は13000〜16000本 /10aで、子実重および収油量の多収が得られる。また、多窒素栽培は菌核病の 発生を助長するので、窒素施肥量は普通種と同様6kg/10a程度とする。
  2. 畦幅、栽植密度以外は普通種の栽培法に準ずる。

【 具体的データ 】

 表1 畦幅、窒素施肥量、栽植密度の比較
------------------------------------------------------------------------------
 畦幅   菌核病   収穫期 (cm)     10a当り(kg)      油分 千粒重
    年 発病度  -------------  ---------------------------
 (cm)    (%)  茎長 茎太 頭花径 総重 子実重 同左比(%) 収油量 (%)  (g)
------------------------------------------------------------------------------
 畦幅の比較 (窒素6、9kg/10a、栽植密度10000、13000、16000本/10a平均)
 60cm  4  42.6  75 1.76 12.2  387  122   112    50  41.2  38.5
    5  16.8  86 1.88 14.4  606  180   100    85  47.2  36.2
    平均 29.7  81 1.82 13.3  497  151   104    68  44.2  37.4
 70cm  4  59.5  80 1.81 12.0  353  109  (100)   44  40.5  39.9
    5  16.7  88 1.85 14.2  570  180  (100)   82  45.8  37.0
    平均 38.1  84 1.83 13.1  462  145  (100)   63  43.2  38.5
窒素施肥量の比較{畦幅60(平成3年は50)、70cm、栽植密度10000、13000、16000本/10a平均}
6    3  33.8 106 1.76 14.0  705  194  (100)   94  48.6  43.6
kg/10a 4  47.1  79 1.80 12.2  388  119  (100)   49  41.5  39.0
    5  12.8  87 1.85 14.2  588  178  (100)   83  46.7  36.0
    平均 31.2  91 1.80 13.5  560  164  (100)   75  45.6  39.5
9    3  35.5 104 1.76 14.0  675  196   101    94  47.6  43.7
kg/10a 4  55.0  76 1.76 12.0  352  112   94    45  40.3  39.4
    5  20.6  87 1.88 14.5  589  182   102    84  46.3  37.1
    平均 37.0  89 1.80 13.5  539  163   99    74  44.7  40.1
栽植密度の比較 {畦幅60(平成3年は50)、70cm、窒素6、9kg/10a平均}
10000  3  34.2  98 1.88 15.2  638  183  (100)   88  47.8  46.5
本/10a 4  54.4  75 1.86 12.7  344  106  (100)   44  40.8  42.0
    5  20.9  82 2.03 15.4  563  176  (100)   80  45.6  38.7
    平均 36.5  85 1.92 14.4  515  155  (100)   71  44.7  42.4
13000  3  33.4 106 1.78 13.8  700  190   104    89  47.2  43.6
本/10a 4  47.5  78 1.83 12.2  389  130   123    53  40.8  39.7
    5  16.2  88 1.85 14.2  592  180   102    85  47.1  36.3
    平均 32.4  91 1.82 13.4  560  167   108    76  45.0  39.9
16000  3  36.2 112 1.63 13.0  731  213   116   105  49.3  40.9
本/10a 4  51.3  79 1.66 11.4  377  110   104    45  41.1  35.9
    5  13.2  91 1.72 13.4  610  184   105    85  46.9  34.8
    平均 33.6  94 1.67 12.6  573  169   109    78  45.8  37.2
------------------------------------------------------------------------------

【 その他 】

試験課題名:道央水田地帯への特産作物(ソバ、ヒマワリ)の導入と新栽培技術の開発
予算区分 :補助(地域水田農業)
研究期間 :平成5年度(平成3〜5年)
研究担当者:吉田俊幸、梶山努
発表論文 :なし

        「平成6年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.91