乳牛育種における飼料利用性向上をめざす選抜指標の活用
北海道立根釧農業試験場 酪農第一科
部会名畜産専門乳牛育種対象 乳牛分類 

【 背景・ねらい 】
 飼料利用性を加味した簡易な選抜指標を明らかにし、この指標により個体選抜を実施した場合の乳牛群の遺伝的改良量の解析を行う。

【 試験研究方法】

  1. 簡易な飼料利用性指標の作出
    飼料利用性を加味した初産牛の個体選抜をはかるため、摂取エネルギ-と産乳および増体との関係について個体の能力差を検討する。
  2. 簡易な飼料利用性指標の遺伝的パラメ−タ−推定
    フィ-ルドにおいて利用可能な簡易な選抜指標を検討する。

【 結果の概要・要約】

  1.  泌乳牛の摂取エネルギ−の使用型に分割するため、生産によるエネルギーのアウトプット量を、脂肪率、乳蛋白質率および乳糖率によるPCM(蛋白補正乳)を用い得ることが牛乳のエネルギ−分析により示された。
     体重変化としてのアウトプットの把握は毎週の測定値をスムーズ化し、4次多項式で推定した。さらに、摂取エネルギ−の分配を把握するため、初産牛56頭延べ156乳期のエネルギ−代謝試験により、泌乳前中後期のME摂取量、体蓄積量および乳エネルギ−を測定した(195.3、-.86、77.4:184.5、-.65、66.4および171.3、-.74、56.2MJ/kg)。
     さらに、フィ-ルドに適応させるために簡易な指標を作成した(表1)。
  2.  粗飼料利用性の育種価(BV)の推定のために、相加的遺伝分散(σ2a)、永永続的環境効果の分散(σ2p)および残差分散(σ2e)を単一形質REML法で推定し、遺伝率を0.3342と算出した。その結果をもとに、全血縁関係を考慮した(1,415頭)BLUP法アニマルモデルによる育種価推定をした。
    MBS(代謝体重)およびPCMの母数効果として誕生年による推移は、2次および1次回帰で示された。
     飼料利用性の育種価は、MEおよびサイレ-ジのエネルギ-による飼料利用性効率[(PCM+DG)/ME、(PCM+DG)/MJ_サイレ-ジ、PCM/MJサイレ-ジおよびPCM]の年次推移は、.0005ポイント/年、-0.0002ポイント/年、0.005ポイント/年および0.1389kg/年であった。
     育種価に基づいて、血統を遡ってシミュレーション淘汰した場合の結果は、(PCM+DG)/ME、(PCM+DG)/MJ_サイレ-ジ、PCM/MJサイレ-ジおよびPCMで各々0.004ポイント/年、-0.0001ポイント/年、0.0025ポイント/年および0.6901kg/年であった。
     ME摂取量に対する効率は、やや低下するが、サイレ−ジのエネルギ−に対する効率およびPCMは、明らかに改良された(図1)。
     種雄牛の飼料利用性効率の育種価の変異は、各形質最大幅で0.052ポイントから0.2310ポイントの差であり、選抜の余地があることが示唆された。

【 具体的データ】

         表1 代謝試験による飼料利用性指標
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(PCM+D)/ME=2.42+0.45PCM/MBS +.90F%+ 5.88NE/PCM       (R*2=.88)

PCM/ME=11.14-.52PCM/MBS-3.74BWch/MBS+.45NE/PCM+.62PCM-.10MBS+.37F%
                              (R*2=.44)
(PCM+D)/MJ_S= 3.88+.29PCM/MBS+56.40Wch/MBS+1.42F%-.02Day  (R*2=.72)

 PCM/MJ_S  =12.62-.67PCM/MBS+.75PCM-.09MBS-.01Day+.53F%  (R*2=.51)
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  PCM:乳蛋白補正乳量、D:体蓄積エネルギ-、ME:摂取代謝エネルギ-、MJ_S:粗飼料
  からの摂取エネルギ-、MBS:代謝体重、F%:脂肪率、Day:分娩後日数、NE/PCM:
  NEm+NEgに対する単位PCM、PCM/MBS:PCMに対する単位MBS、BWch/MBS:体重
  変化に対する単位MBS。

【成果の活用面と留意点】
  乳検組織又は乳牛改良団体等における参考資料とし、酪農家個人では指導組織の支援を得つつ利用されたい。

【残された問題とその対応】
  異なる環境効果を有する牛群での、これらの簡易指標の応用が為されていない。したがって、今後さらに気候および飼料体系の異なるフィ−ルドデ−タによる検証が望まれる。

【 その他 】

研究課題名:乳牛育種における飼料利用性向上をめざす選抜指標の活用
予算区分 :道 費
研究期間 :昭63年〜平4年
担 当  :根釧農試 酪農第一科

        「平成6年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.536