初産次乳生産の向上を目指した育成妊娠期の栄養水準
【 要約 】 育成妊娠期に高増体飼養を行った乳用後継牛は、体脂肪蓄積の他に体格発育も 成熟値に近づき、分娩前後の繁殖性も良好であった。泌乳期には、体脂肪動員と摂 取養分の乳生産への分配割合が増し、乳成分の低下なしに初産次乳量向上が認め られた。
北海道立新得畜産試験場・研究部・酪農科連絡先 01566-4-5321
部会名畜産・草地専門飼育管理対象 乳用牛分類指導

【 背景・ねらい 】
 ホルスタイン育成雌牛を用いて、育成妊娠期の栄養水準(H区:日増体量 0.8kg、S 区:日増体量 0.5kg)と体脂肪蓄積および体格の関連を明らかにするとともに、乳生産 や繁殖性に与える影響を検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 試験開始時の体重・体尺、受胎月齢に有意な差はなかった(表1)。 この増体量にするには、H区では乾物で2.5kg/日程度、S区ではほとんど配合飼料を給与しなかった。
  2. 試験開始時から分娩時までの体尺値の増加量は、H区がS区に比べて平均値が高くなり体重と相関があると言われている胸囲の他に尻長や体格の指標としている体高値にも有意な差がみられた(表2 P<0.05)。また、育成期の成長に関与するIGF−1が有意に高くなった(P<0.05)。
  3. 分娩後、タンパク質の充足率は両区とも満たしていた。TDN充足率はS区は充足していたが、H区では分娩後10週齢までTDN充足率を満たさなかった。
  4. 分娩後6週齢までH区でNEFAの値が上昇し有意な差が認められた(P<0.05)。
  5. 体重は、S区では分娩後から分娩後44週齢まで一定割合で増加したが、H区では8週齢まで減少・停滞した後、緩やかに上昇し泌乳後期には増体割合が高まった。 (図1)
  6. TDN摂取量は両区に有意な差がないにもかかわらず(図2)、305日間FCM量は、H区で7,777kg、S区で6,776kgと有意な差(P<0.01)となった。乳成分率には有意な差は認められなかった(表3)。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 高増体飼養では、摂取粗飼料の種類・質に応じて増体のための配合飼料給与量は異な る。
  2. 体重、ボディコンディション および体高などを調査し、過肥にしないような注意が必要であ る。
  3. 高能力後継牛において、高増体飼養法による初産次乳生産向上効果が期待できる。
  4. 本飼養法で初産次乳生産を向上させると、泌乳初期に高泌乳経産牛と同様の影響が想 定されることがあるので飼養管理上の配慮が必要である。

【 その他 】

研究課題名:高位乳成分の安定化と生産病予防技術確立試験
予算区分 :国費補助(低コスト)
研究期間 :平成5年度(平成3〜5年)
研究担当者:大坂郁夫、原悟志、糟谷広高、遠谷良樹、小倉紀美、塚本達、田村千秋、所和暢
発表論文等:第88回日本畜産学会口頭発表

        「平成6年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.425