ペレニアルライグラス放牧草地の集約利用
【 要約 】 ペレニアルライグラス放牧草地の集約利用技術として、年間11回の多回,短草利用は 年間6回利用に比較して放牧草地1ha当たりの家畜生産(増体量)が8%高く(4カ年 平均)、草種構成(造成から6年)を良好に維持できる有効な利用方法である。
北海道立天北農業試験場 研究部 草地飼料科連絡先 01634-2-2111
部会名北海道畜産草地(家畜)専門栽培 対象ペレニアルライグラス分類指導

【 背景・ねらい 】
 北海道の酪農は、規模拡大,高泌乳化によりサイレ−ジ主体の通年舎飼い型へ移行しつつある。しかしゆとりある酪農を目指すには、放牧による低コスト,省力化(飼養管理,粗飼料調製量の軽減)を図る必要がある。ペレニアルライグラスの栽培面積は、北海道北部地域で順調に増加しており、同草地を集約利用し、高い生産性を達成した酪農家もある。
 以上の背景から、ペレニアルライグラス放牧草地の集約利用(年間多回,短草利用)による効率的な家畜生産(乳,肉生産)を可能とする集約利用技術を確立し、合わせてオ−チャ−ドグラスとの家畜生産性を比較する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. ペレニアルライグラス放牧草地の1ha当たりの家畜生産(増体量)は、年間11回利用の集約利用(集約)が年間6回利用(対照)に比較して、約8%高かった。(表1)
  2. ペレニアルライグラス放牧草地は、造成から6年間において草種構成を良好に維持でき、さらに集約利用は茎数増加や裸地率減少に有効な方法であった。(図1)
  3. オ−チャ−ドグラス放牧草地との家畜生産の比較では、集約利用した場合、ペレニアルライグラスが約16%高かった。(表2)
  4. 放牧草地の造成当年の利用として、草地におよぼす影響は、放牧強度が同程度では、成牛,育成牛の違いは無かった。放牧強度については成牛(体重625kg)で133頭/ha,育成牛(同300kg)で266頭/ha程度の放牧が、草地の状態を良好に維持するために適切であった。(表3)
  5. ペレニアルライグラス放牧草地の集約利用における放牧草採食量は、供給草量(kg/10a)と採食面積(%)の2項目を用いた以下の重回帰式により、簡易に推定することが可能であった。
       採食量(kg/10a) = 0.358 × 供給草量 + 2.357 × 採食面積 − 63.2

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 造成年の初回放牧は、降雨や草地の状態を考慮して開始する必要がある。
  2. 草種間の家畜生産の違いは、年間多回,短草の集約利用した場合の差である。
  3. 放牧草採食量の推定式は、集約利用(草丈25cm程度)を行った草地で適用できる。

【 その他 】

研究課題名:ペレニアルライグラス放牧草地の集約利用方式の確立
予算区分 :道費
研究期間 :平成5年度(昭和63〜平成5年)
研究担当者:石田 亨、住吉正次、寒河江洋一郎、川崎 勉、坂東 健、蒔田秀夫、裏 悦次
発表論文等:なし

        「平成6年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.427