優良耕地保全のための重金属(亜鉛)管理指標
【 要約 】 道内の農耕地土壌の亜鉛(Zn)濃度は平均値で、全Znが汚泥施用基準の120mg/kg以下、 可溶性Znが環境基準の50mg/kg以下である。全Zn濃度は黒ボク等で低く、また、耕地が 未耕地より高い傾向である。
北海道立中央農業試験場・環境化学部・環境保全科連絡先 01238-9-2001
部会名生産環境専門環境保全対象 分類指導

【 背景・ねらい 】
 土壌管理基準値が設定されているZnについて、北海道の農地における土壌含量の実態 およびその営農活動の影響を明らかにする。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 未耕地土壌の全Zn濃度は黒ボク土・多湿黒ボク土・泥炭土の低いグループ(平均値38〜45mg/kg)と褐色森林土・灰色台地土・褐色低地土・灰色低地土・グライ土の高いグループ(58〜68mg/kg)に分けられる。可溶性Zn濃度は3.0〜9.3mg/kgの範囲にあり土壌群間に有意な差が少ない一方、支庁別全Zn濃度の平均値は黒ボク土・多湿黒ボク土・泥炭土の分布面積が広い渡島・石狩・日高・十勝・釧路・根室が50mg/kg未満と低い(図1、表1)。
  2. 耕地土壌の全Znおよび可溶性Zn濃度の平均値は地目別による差、すなわち営農の影響がみられ、樹園地で最も高く、それぞれ93、18.8mg/kgである。未耕地で認められた全Zn濃度の土壌群間の差は、耕地では明瞭でない(図2、図3)。
  3. 土壌群毎の全Znおよび可溶性Zn濃度と施用が予想される資材のZn含有率・施用量等を考慮した、Zn管理指標のための全Zn濃度(50未満、50〜65、65〜80、80mg/kg以上の4レベル)と可溶性Zn濃度(4未満、4〜6、6〜8、8mg/kg以上の4レベル)の分布図を作成。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 母材そのもののZn濃度が高い台地土や低地土に立地する樹園地やその跡地を利用する場合には、施用資材の亜鉛含有率と施用量に注意を要する。
  2. 全Zn・可溶性Zn濃度分布図は汚泥等亜鉛含有資材の施用にあたっての目安とする(全Zn濃度は環境庁の汚泥施用基準120mg/kg以下、可溶性Zn濃度は北海道の環境基準50mg/kg以下)。両図とも亜鉛欠乏発生予測には活用できない。

【 その他 】

研究課題名:優良耕地保全のための重金属管理指標の確立
予算区分 :道単
研究期間 :平成5年度(昭和62〜平成4年)
研究担当者:乙部裕一、佐藤龍夫
発表論文等:乙部ら(1989):土地利用による土壌中重金属濃度の変動(第1報),土肥講要集,35,251
      乙部ら(1989):土地利用による土壌中重金属濃度の変動(第2報),38,265
      乙部ら(1989):土地利用による土壌中重金属濃度の変動(第3報),39,18

        「平成5年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.360