水稲新品種候補系統「上育糯417号」(風の子もち)
【 要約 】 「上育糯 417号」は北海道で中生の早に属し、良質・多収かつ耐冷性を具備した糯種である。本系統を普及することにより、作付け指標に基づく適正な熟期配分を推進し、道産糯米の品質向上と安定生産を図る。
北海道立上川農業試験場・研究部・水稲育種科連絡先 0166-85-2200
部会名作物専門育種対象 稲類分類普及

【 背景・ねらい 】
 北海道における糯品種の作付は、7支庁管内、 25市町の11,000haに及び「もち団地」を形成している。これらのうち、早生種地帯では道産糯米として評価の高い良質・耐冷性の「はくちょうもち」の作付比率が80%以上にも達し、熟期配分による適期刈取りの支障となり品質向上、さらには危険分散のうえでも問題が出ている。
 一方、道央部以南では、「はくちょうもち」に比べて品質が劣る「たんねもち」が高い作付比率をもつために、良質糯品種の早期育成が強く要望されている。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 昭和62年に早生・耐冷性糯系統の「上系 85201」と、早生・耐冷性・良質品種の「北育糯80号」(のちの「はくちょうもち」)とを交配し、その後代から育成したものである。平成 4年度より「上育糯 417号」の系統名を付して地方適否を検討してきたもので、平成 6年度における世代はF9である。
  2. 2 出穂期は対象品種の「たんねもち」、「はくちょうもち」に比べて 2日程度遅く、中生の早で、成熟期も「たんねもち」よりやや遅い。玄米品質は「はくちょうもち」並に良好で、かつ多収である。いもち病耐病性は中であるが、障害型耐冷性は強〜極強と優れている。餅は白く、きめの細かさが優れ、良食味である。
  3. 登熟日数が「たんねもち」並に長く、中生種としてはいもち病耐病性が不十分である。また、初期分げつがやや劣る。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 上川(士別以南)、空知、石狩、渡島支庁管内およびこれに準ずる良地帯において「たんねもち」の大部分と「はくちょうもち」の一部分に替えて作付することにより、当該地帯の良質糯米の安定生産を図る。普及見込み面積 2,000 ha。
  2. 中生種であり、登熟日数が比較的長いので、生育の遅延する地帯および登熟期間の短い地帯では成苗を用い、早植えなど生育促進技術を励行する。また、初期分げつが劣るので、基準の栽植株数を確保する。
  3. 中生種としてはいもち病耐病性が不十分なので適期防除に努めること、および品質低下を防ぐため、適期刈取りに留意する。

【 その他 】

研究課題名:寒地中北部向け早生・高度耐冷性、良食味及び直播栽培適性品種の育成
予算区分 :指定試験
研究期間 :平成6年度(昭和62〜平成6年度)
研究担当者:佐々木一男、柳川忠男、相川宗厳、前田 博、田縁勝洋、菊地治己、
      丹野 久、菅原圭一、吉田昌幸、新橋 登、木内 均、平山裕治

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.1