水田における雑草害の実態と物理的防除適期
【 要約 】 無除草栽培において減収率20%とした時の雑草量は移植後30日で、ノビエ優先水田のノビエ約19本/m2、全雑草乾物重約3.3g/m2と推定される。雑草が少発生の場合は移植後30日(全雑草量2.5g/m2)以内に1回の除草で、多発生の場合(同9〜14g)は同40日以内に3回の除草でほとんど減収しない。
北海道立上川農業試験場・研究部・水稲栽培科連絡先 0166-85-2200
部会名作物専門雑草対象 稲類分類指導

【 背景・ねらい 】
 消費者のより安全な食品指向が一層高まるなか、米についても消費者と直結した有機栽培や減農薬栽培、無除草剤栽培が各地で行われるなど、内外の産地間競争は激しくなりつつある。
 そこで、本試験では無除草剤栽培の場合の雑草害の実態を明らかにするとともに、雑草発生量に対応した物理的除草の適期・回数を知ることを目的とした。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 雑草量(X)と収量比(Y)には負の相関があり(図1)、寄与率52〜94%で、Y=1/(a+bX)の曲線回帰式が適合した。移植後日数(X)と雑草量(Y)の関係、Y=cedXの回帰式から減収率0%とした時の雑草量は、移植後30日(6月中旬)でノビエの優占水田ではノビエは約1本/m2、全雑草乾物重は約0.1g/m2、同50日(7月上旬)で約11本/m2、約0.3g/m2であった。また、減収率20%とした時の雑草量は移植後30日でノビエは約19本/m2、全雑草乾物重は約 3.3g/m2、同50日で約40本、約10g/m2であった (図2、表1)。
  2. 雑草発生量の少ない水田(雑草量、移植後30日2.5g/m2)では、移植後30日頃までに1回、物理的除草としての手取りをするとほとんど減収しなかった。
  3. 雑草発生量が中程度の水田(同3.5g/m2)では、2回の物理的除草を行い、1回目は移植後20日頃、2回目は移植後50日頃(7月上旬の幼穂形成期)までに行うとほとんど減収しなかった(図3左)。
  4. 雑草発生量が多い水田(同9〜14g/m2)では、移植後20+30+40日頃の3回の物理的除草を行うとほとんど減収しなかった(図3右)。
  5. 以上から、得られた減収率別の雑草量は一応の目安として、また物理的除草の適期・回数は除草作業の効率化や除草剤の多量散布の防止などの診断指針に利用できると思われる。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 優占草種がタイヌビエ、ホタルイである水田で適用し、特殊雑草(ヒルムシロ、ウリカワ、エゾノサヤヌカグサなど)多発田は除く。
  2. 偏東風地帯などの雑草発生の遅い地帯では、発生時期を考慮する。

【 その他 】

研究課題名:水稲の減農薬栽培技術の確立
予算区分 :道 費
研究期間 :平成3年〜6年度(平成3年〜7年)
研究担当者:谷川晃一、五十嵐俊成、富原 睦
発表論文等:な し
        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.41