北海道の水田におけるメタンの発生実態
【 要約 】 寒地水田から発生するメタンガスの発生量は土壌により1〜30g/m2程度で、 土壌還元と関係していた。未分解有機物の施用は発生量を高めるが、堆肥化して施 用することにより大きく減少した。また中干し・透水改善により発生量を抑制でき る。
北海道立上川農試・土壌肥料科連絡先 0166-85-2200
部会名生産環境専門環境保全対象 水稲分類指導

【 背景・ねらい 】
 現在、大気中における温室効果ガス濃度は急激に増加しつづけている。中でもメタン (CH4)は大気中濃度が1.8ppm程度にすぎないが、年間増加率が0.9%と他の温室効果 ガスより大きく、また熱吸収相対値が炭酸ガスの20倍以上であるため温暖化寄与率は約 15%と重要な位置を占めている。その発生源としては湿地・水田・家畜等が挙げられる が、水田から発生するメタンガスの実測データが極めて少ない。そこで本試験では、寒 地水田から発生するメタンの動態を土壌タイプ別に調査し、湛水期間中の発生量を推定 するとともに、現行肥培管理がメタン発生に及ぼす影響を明らかにする。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 湛水期間を通じた土壌型別メタンの総発生量は大きい方からグライ土(31.0g/m2)、 灰色低地土(3.1g/m2)、褐色低地土(1.0g/m2)の順である。(表1)
  2. 土壌酸化還元電位とメタン発生量には密接な関係が認められ、約-150mVを境にして発 生が高まる。(図1)
  3. 稲わら施用によってメタン発生量は顕著に高まり、特に稲わら春鋤込みは秋鋤込みと 比較して発生量が大きい。
  4. 堆肥施用によるメタンの生成量は稲わら鋤込みに比較して小さい。また堆肥生成過程 におけるメタン発生量も微量である。(図2)
  5. 圃場の透水性改良、中干しはメタン発生の抑制に効果的である。
  6. 過剰な代かきはメタン発生量を増加させる。

【 成果の活用面・留意点 】
水田からのメタン発生を現行肥培管理を活用して抑制する場合の参考とする。

【 具体的データ 】

表1 土壌型とメタン発生量
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        CH4(g/m2)、湛水期間(5月〜8月)推定
  土 壌 型 ------------------------------------------
       平成4年 平成5年 平成6年 平 均 値
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 褐色低地土  0.97   0.95        0.96
 灰色低地土       3.12        3.12
 グライ土  51.32        10.62   30.97
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注)褐色低地度は上川農試(永山:新戒統12A02)を使用した。

【 その他 】

研究課題名:土壌生成温室効果等ガス動態調査事業
      −水田におけるガス発生実態と抑制技術確立−
予算区分 :補助(土壌保全)
研究期間 :平成6年度(平成3年〜6年)
研究担当者:後藤英次、田丸浩幸、野村美智子、稲津 脩
発表論文等:寒地水田におけるCH4ガス発生動態と肥培管理技術の関係,日本土肥講演要旨集、41、(1994)

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.302