菜豆(金時類)の色流れ粒の発生要因
【 要約 】 「大正金時」の色流れ粒は成熟期6日前頃より発生危険期となる。色流れ粒発生は成熟期前後の降雨により発生し、降雨時の気温が高いほど発生が早くなる。金時類を晩播栽培し,成熟期を遅らせることにより色流れ粒発生回避の可能性が高くなる。
北海道立十勝農業試験場・研究部・豆類第二科連絡先 0155-62-2431
部会名作物専門栽培対象豆類 分類指導

【 背景・ねらい 】
 金時類は成熟時の降雨により色流れ粒が発生し,その品質が著しく低下,価格下落の 要因となっている。しかし,金時類の莢実の登熟と気象要因の関係から色流れ粒発生に 関する詳細な調査はされていなかった。そこで色流れ粒の発生の時期を莢実の成熟度か ら解明し,発生しやすい気象条件を明らかにするとともに,色流れ粒発生の回避技術と して晩播適期を検討した。

【 成果の内容・特徴 】
 本試験は早生の金時品種「大正金時」を用いた。

  1. 食糧検査事務所の判定では色流れ粒はほとんどL*a*b*表色系におけるL*値が35以上 の子実であった。
  2. 大正金時における莢実の成熟にいたる水分推移,着色,個体内での莢実の成熟過程 は以下のようであった。(各成熟度の分類は表1のとおり)
    1. 子実の着色は成熟度I(莢実水分61〜70%)頃より始まり,成熟度III(莢実水分41 〜50%)頃よりL*値が35以下となる。
    2. 色流れ粒の発生は成熟度0〜IIの莢実では起こらず,成熟度III〜Vに莢実で発生し た。また,色流れ粒の発生は成熟度III>成熟度IV>成熟度Vの順であった(図1)。
    3. 成熟度Iから成熟度V(成熟莢)になるには8〜10日程度を要し,色流れ粒発生の 危険期間は色流れ粒の発生する成熟度III〜Vの莢実割合が増える成熟期6日前からである(図2)。
    4. 降雨時の気温が高い場合色流れ粒の発生は早くなる(図3)。
    5. 金時類は晩播することにより5月下旬播種に比べ成熟期における気温は低くなる傾 向にあり,色流れ粒発生を回避できる可能性がある。
    6. 十勝地方,網走地方における大正金時の成熟期推定式は生育期間内の日平均気温を 独立変数,生育日数を説明変数すると十勝地方ではY=-6.02X+206.13(r=-0.89**),網 走地方ではY=-8.90X+254.59(r=-0.90**)で表せる。
    7. 上記推定式と過去10年間の気象から十勝,網走地方における色流れ粒発生回避の 晩播適期は,十勝中央および中央周辺では6月中旬程度,十勝山麓,沿海および網走 地方では6月上旬〜中旬程度と推定された(表2)。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 金時類を晩播栽培することにより色流れ粒の発生回避の可能性が高くなる。
  2. 晩播は成熟期が遅れることにより秋播小麦の栽培が不適となるので計画的作付に努 める。
  3. 晩播することにより年次によっては百粒重が小さくなることがある。

【 具体的データ 】

 表1 「大正金時」の莢実成熟度の分類
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成熟度 外 観 莢実水分      莢実及び子実の外観
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 0  青 莢  71〜   子実は肥大途中、子実は未着色
 I  白 莢  61〜70  莢殻は緑色が退色、子実の着色が始まる。
 II  黄 莢  51〜60  莢殻が黄色になる。
 III   −   41〜50  子実の赤紫が濃い色を呈する。
 IV   −   31〜40  外観は成熟莢とほほ同様。やや子実水分が多い。
 V  成熟莢   〜30  子実、莢実ともに乾燥。
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【 その他 】

研究課題名:菜豆(金時類)の色流れ粒発生の要因解明と対策に関する試験
予算区分 :道単(豆基)
研究期間 :平成3〜6年
研究担当 :佐藤 仁,江部成彦,品田裕二
発表論文等:なし

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.47