北海道中央部における密植と窒素増肥による大豆多収技術の開発
【 要約 】 密植(栽植本数25、000〜33、000本/10a)と緩効性窒素基肥増または開花期頃の窒素追肥(褐色低地土窒素10kg/10a、泥炭土窒素 5〜10kg)により「ツルムスメ」は420kg/10a、「スズマル」は350kg/10a程度の高収を得ることが可能である
北海道立中央農業試験場  環境化学部 土壌資源科
畑 作 部 畑作第一科
連絡先01238-9-2001
部会名高収益畑作
生産環境
専門肥料 対象豆類分類指導

【 背景・ねらい 】
 大豆は畑作の基幹作物であり、転換畑でも重要な作物であるが、近年その作付面積は大幅に減少している。その理由として収量の低水準・低収益性が挙げられ、この低収要因の中には、窒素供給量不足と栽植本数の不足があると考えられる。そこで、道央地帯における栽植密度の適性化と窒素施肥法改善により400kg/10a以上を目標とした大豆の多収栽培技術を検討する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 密植により莢数が増加し、「ツルムスメ」では標準植の1.5倍植(25,000本/10a程度)で14%、2倍植(33,000本/10a程度)で16%、「スズマル」では2倍植で10%増収する。また、泥炭土での増収効果は褐色低地土よりやや低い。両品種とも密植による収量上問題となるほどの倒状はない。(図1)
  2. 400kg/10aの収量を得るにはおよそ30kg/10の窒素を集積する必要があり、 土壌型別の有効態窒素量および根粒による固定窒素量は10a 当たり、それぞれ褐色低地土では5kg、15kg、泥炭土ではそれぞれ 11kg、13kgである 。(表1)したがって、不足分の窒素は褐色低地土では9kg、泥炭土では 6kgとなる。
  3. 開花期の硫安追肥(N5 10kg/10a)により、両品種とも9〜18%の増収を示す、また、基肥に緩効性肥料(被覆肥料)の上積み施用すると(N5 10kg/10a)同様に高い増収(12〜17%)が得られれる。土壌型別にみると、褐色低地土での効果が泥炭土よりも大きい。(図2)
  4. 1989 1994年の例では、密植(栽植本数25,000 33,000本/10a)と窒素増肥を組み合わせた改善栽培法により、「 ツルムスメ」では褐色低地土で標準区の30%以上(428kg/10a)、泥炭土で 20%に近 い(416kg/10a)増収が得られた。「スズマル」ではいずれの土壌型でも15%前後増 収し、300 350 kg/10aの収量が得られた。(図3)

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 密植は、標準の2倍植までの範囲を守る。
  2. 窒素の追肥(硫安)は、開花期よりも早く施用するとより茎葉の増大に働き、根 粒着生を悪くする恐れがある。
  3. 「スズマル」は、密植または窒素増肥により大粒化することがある

【 具体的データ 】


表1 土壌型別の土壌窒素量及び根粒固定窒素量
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土 壌 型  土壌窒素量*  根粒固定窒素量**
        (kg/10a)    (kg/10a)
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褐色低地土  2.5〜9.4(5.5)  11.2〜20.8(15.9)
泥 炭 土 6.8〜17.9(11.4)  8.3〜16.9(13.3)
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注)* :根粒非着生種(To1−0)の無窒素区の吸収量より
  **:品種「ツルムスメ」無窒素区より根粒非着生種(To1−0)の差し引きから
 ( )内の数値は平均値

【 その他 】

研究課題名:豆類の高品質化及び生産性向上と品質検定法の確立
      (1)特殊用途大豆の品質向上栽培技術の開発
      (2)高品質大豆多収栽培法の開発
予算区分 :補助(高収益畑作)
研究期間 :平成4〜6年
研究担当者:長谷川進・白井和栄・高宮康宏・鴻坂扶美子・熊谷秀行・鈴木和織
発表論文等:鈴木和織他、大豆品種「スズマル」の密植栽培における多収量への可能性
      マメ類栽培育種研究通信、31、7〜10(1993)

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.277