てんさい、ばれいしょ、菜豆、小麦の適正輪作年限と効果的な前後作組み合わせ
【 要約 】 てんさい、菜豆は3年、ばれいしょ、小麦は2年以下の輪作年限で減収した。連作による減収程度は菜豆>小麦>ばれいしょ>てんさいであった。てんさいを前作物とする後作物およびてんさい、小麦を含む輪作の収量性は高く、土壌微生物活性も高く維持された。輪作体系としててんさい、小麦を効果的に配置することが重要である。
北海道立十勝農業試験場・研究部・土壌肥料科連絡先 0155-62-2431
部会名高収益畑作・生産環境専門土壌 対象豆類分類指導

【 背景・ねらい 】
 畑輪作様式と作物の生産性評価ならびに生産性に関与する要因の実験的デ−タの蓄積は十分でない。そこで輪作年限、各種の作付様式が畑作物(てんさい、ばれいしょ、菜豆、秋播小麦)の収量におよぼす影響を評価し、適正な輪作年限と効果的な前後作の組み合わせを検討した。さらに異なる作付様式における各作物栽培土壌の微生物性(微生物相、微生物活性)の特徴を検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 4年輪作(てんさい−ばれいしょ−菜豆−秋播小麦の作付様式)に比べ、輪作年限を短縮するとてんさいは3年、ばれいしょ、小麦は2年以下の輪作で減収した。菜豆は3年以下の輪作から減収程度が大きかった(図1、表1)。また連作による減収程度は、ほぼ菜豆>小麦>ばれいしょ>てんさいの順であった。
  2. 主な土壌病害として、てんさい連作で根腐病、ばれいしょ連作および3年以下のてんさい跡でそうか病、小麦連作で雪腐病、菜豆連作および3年以下の輪作で根腐病が多発した。
  3. 同一輪作年限でも前作物によって後作物の収量性は異なり、てんさいでは前作の影響が小さく、ばれいしょはてんさい跡で高く、菜豆跡で低く、小麦跡は試験後期に高まった。小麦はばれいしょ跡で低く、菜豆跡で高かった。菜豆はてんさい跡で高く、ばれいしょ跡で後期に低下し、小麦跡は後期にやや高まった(図1)。てんさい、小麦を含む輪作は長期的には収量性が高かった。
  4. 前作物の違いによる後作物の収量への影響は、全般に輪作年限短縮の影響より小さいが、ばれいしょでは前作物の方が大きかった(図1)。
  5. 連作および輪作年限の短縮により、菜豆、ばれいしょ栽培土壌では土壌呼吸量、バイオマス、酵素活性(セルラ-ゼ活性)等の微生物活性は減少し、てんさい、小麦土壌では増加した。しかしいずれの作物も4年輪作に比べ糸状菌が相対的に増加した(表2)。
  6. 土壌微生物の変動には圃場に還元される残渣(微生物基質)の量および分解の遅速が関与し、てんさい残渣は還元量が多く分解が早い、小麦残渣は量は多いが分解が遅いなどの特性を持ち、前者は直後の後作の、後者はより長期的に土壌微生物活性を高めた。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 本試験は畑作物の輪作年限および作付順序決定の参考となる。
  2. 本試験は淡色黒ボク土で行われたものである。

【 具体的データ 】

 表1 試験開始10年間目までの各作物の連作区の収量反応の特徴
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作物名   減収程度1) 経年的な特徴
        (%)
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てんさい   9(22)  連作5年目から漸減
根重
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ばれいしょ  20(35)  連作2年目から漸減
上イモ重
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菜豆     47(73)  3、4年目まで著しいが、のちやや回復
子実重
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小麦     25(55)  連作2年目から(雪腐れの多発生時激減)
子実重
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1)4年輪作(4a系列)に対する減収。数字は平均値。( )内は最大値。

【 その他 】

研究課題名:根圏微生物活性化による畑作物(菜豆)の安定生産
予算区分:高収益畑輪作
研究期間:平成6年度(平成4〜6年)
研究担当者:奥村正敏、山神正弘、東田修司
発表論文等:作付順序を異にする短期輪作(9年目)における主要畑作物の収量反応、土肥要旨集、40、1994.
      十勝地方の主要畑作物を組み合せた各種作付様式と土壌微生物特性の変動、土肥要旨集、40、1994.

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.280