小麦の簡易迅速品質判定機
【 要約 】 近赤外分光分析計を利用した本簡易品質判定機は、小麦の水分、蛋白含有率を実用可能な精度で非破壊かつ迅速に測定することができる。一方、アミロ最高粘度の推測値はやや精度に欠けるが、低アミロ小麦の大まかな仕分けには有効である。
北海道立中央農業試験場・農産化学部・穀物利用科
株式会社 クボタ
連絡先 01238-9-2001
0729-93-4642
部会名流通利用
生産環境
専門機械対象 麦類分類指導

【 背景・ねらい 】
 北海道産小麦は、年次や地域によって蛋白含量やアミロ粘度が大きく変動することが問題になっている。これを解決するには、栽培技術の改善とともに、受入段階での品質評価・仕分けが重要であり、そのための簡易・迅速な測定装置が必要である。そこで、近赤外分析装置を用いて小麦品質中の水分、蛋白含有率、アミロ最高粘度を非破壊かつ迅速に判別できる装置を開発し、現地試料への適用性を検討する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 小麦品質判定機の特徴:本装置は、小麦の品質(水分、蛋白含有率、アミロ最高粘度)を非破壊かつ迅速(約2分/点)に測定できる。本装置のソフト面の中枢である校正用の検量線を設定するに当たっては、北海道産麦を対象に試料分析と測定波長、成分量の決定に主体的に取り組んだ。また、ハード面では水分変動の大きい試料を測定する際に問題となる透過光のバラツキを解消するため、分光光度計の受光素子の電荷蓄積時間を制御できるように改良を加えた。
  2. 本装置を用いて成分・項目ごとにその適合性を検討した。
    1. 生麦(子実水分15〜40%)に対しては推測誤差1.3%、乾麦(子実水分10〜15%)に対しては0.4%以下の推測誤差で水分測定が可能である(図1、2)。
    2. 蛋白含有率については、生麦、乾麦ともに0.5%以下の推測誤差で測定が可能である(図3、4)。ただし、乾麦は蛋白含有率14%以上では誤差が大きい。
    3. アミロ最高粘度については、推測誤差が150B.U.とやや大きいが、低アミロ小麦の大まかな仕分けには活用できる(表1)。

【 成果の活用面・留意点 】
 本機材は原粒のままで水分・蛋白含有率の推定が可能であり、小麦受入現場における仕分けや乾燥・調整段階の品質管理、および出荷時の品質表示に活用できる。
 また、アミロ最高粘度の推定に関しては、乾燥施設等で受け入れる段階の区分に有効と思われるが、他の分析法を併用することが望ましい。

【 具体的データ 】


表1 成分項目ごとの推定誤差
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       水分(%)   蛋白含有率(%)  最高粘度(B.U.)
      生麦 乾麦  生麦 乾麦*  生麦 乾麦
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許容推測誤差 〜2 〜0.5  〜0.5 〜0.5  〜150 〜150
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 校正用  1.33 0.32  0.45 0.45   118  104
 評価用  1.38 0.35  0.43 0.41   139  145
 H6現地  1.08 0.38  0.41 0.37
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*)乾麦の蛋白含有率の推定は14%未満を対象とする。

【 その他 】

研究課題名:NIRを用いた農産物の非破壊品質判定機の開発
予算区分 :共同
研究期間 :平成6年度(平成4年〜6年)
研究担当者:中津智史、大村邦男、清水昭佳、鈴木良治
発表論文等:

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.284