品種開発に向けた遺伝資源情報(麦類、大豆)
【 要約 】 植物遺伝資源の分類整理、育種材料としての評価を進めるため一次評価項目の特性調査を行い、特徴的な特性及び遺伝資源についての情報を示す。
植物遺伝資源センター 研究部資源利用科
資源貯蔵科
連絡先 0125-23-3195
部会名地域基盤・作物専門遺伝資源 対象麦・豆類分類研究

【 背景・ねらい 】
 現在北海道立農業試験場が保存している遺伝資源について、分類整理に必要な基本的な特性(一次評価項目)の特性調査を実施してきた。
 本成果は、平成6年3月に刊行した「植物遺伝資源の特性調査成績(水稲、麦類、大豆)」(植物遺伝資源センター資料1号)のうちから、成績とりまとめに使用したデータベースを用いて、特徴的な特性を持つ遺伝資源についての情報を示し、育成場その他での参考とするためにまとめたものである。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 麦類については平成2〜4年に特性調査が行われた大麦(二条大麦)392点、春播小麦652点、秋播小麦270点、計1,314点について、主として量的形質の特性値の変異を示す。(表1)
  2. 麦類について多収性母材選定の参考とすべく、穂の収量構成要素について特徴的な品種系統を抜粋した。(図1)
  3. 大豆については昭和63〜平成4年に特性調査が行われた1,253点について、形質の特性値の変異を示すとともに、特徴的な値を示した品種系統名を抜粋した。
  4. 大豆について早生、大粒、多収性母材選定の参考とすべく、成熟期と莢数×百粒重、成熟期と百粒重の関係について、また、黒豆、青豆の成熟期と莢数×百粒重の関係について特徴的な品種系統を抜粋した。(図2)

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 一次評価によって得られた特性データをもとに遺伝資源の分類、整理を行う。
  2. 交配母材探索、さらに二次評価を行うための材料選択の参考データとして利用する。
  3. 未調査の材料について今後も引き続き一次評価を継続する必要がある。
  4. 調査年次により生育等が若干異なるので、それを考慮した上で利用する。

【 具体的データ 】


 表1 春播小麦遺伝資源の原産地別変異(平成2年度)
原産地別  全品種  日本 アジア 地中海 ヨーロッパ 旧ソ連 アフリカ 北米 中南 オセアニア
      系統          沿岸                   米
品種系統数  348    45   24    30    19    16   10   82   11    14
穂長(cm)   4.9   5.9   8.1   8.2    4.9    5.6   8.3   6.1   8.2   7.8
       10.0   9.3  10.6   10.5   10.1   10.0  10.2  10.0  10.6   10.4
       14.3   14.3  12.8   12.2   12.9   12.7  12.4  13.8  12.3   13.6
粒着の粗密  1.1   1.2   1.4   1.4    1.3    1.5   1.5   1.1   1.4   1.4
 (小穂/cm)  1.7   1.8   1.7   1.7    1.8    1.8   1.7   1.7   1.7   1.7
       3.5   3.2   2.1   2.3    3.5    3.5   2.0   2.9   2.0   2.0
千粒重(g)  24.8   24.8  28.2   29.7   27.2   25.4  26.9  28.5  31.6   32.5
       36.5   35.0  35.8   38.1   38.5   36.5  37.7  36.4  38.3   36.4
       55.5   47.5  47.9   53.0   48.0   48.8  43.4  49.0  45.1   46.5
注)表中の数字:上段;最小値、中段;平均値、下段;最大値

秋播小麦遺伝資源平成2年度調査ののうち穂長×千粒重の高い値の品種名
   ALTON、VALLEY、CHAMPION WHITE、AUSTRO BANKUT、FULVO


大豆遺伝資源のうち、早生、大粒、多収であった品種名
 ★(特に有望):L 229、福島ー梅原、PI 295950、十育213号
 ●:極早生夏大豆、早生小袖、M-4028、黒農16号、吉岡中粒、幌加内在来、CANOTIA、
   DULAWAKAN、足寄早生、CST 28、BYDGOSKA 052、中系151号、L21、PI 297526、
   CLARK(DT1)、中系147号 ニュ−ジャイアンツ、中系128号

【 その他 】

研究課題名:植物遺伝資源の特性調査−自殖性作物の特性調査−
予算区分 :道費
研究期間 :昭和63〜平成4年
研究担当者:森村克美、谷村吉光、千藤茂行、白井和栄、飯田修三、小林敏雄、
      紙谷元一、荒木和哉、渡辺喜芳
発表論文: 植物遺伝資源の特性調査成績(水稲、麦類、大豆)、(1994)
        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.443