小麦の低アミロ耐性品種育成のための検定
【 要約 】 低アミロ小麦は1.成熟期以降の降雨による穂発芽、2.成熟期前後の高α− アミラーゼ活性により発生するが、両者の相関は低い。低アミロ耐性品種育成のた めには、成熟期以降の穂発芽耐性とともに、成熟期前後のα−アミラーゼ活性につ いても検定する必要がある。
北海道立中央農業試験場 農産化学部 穀物利用科
北海道立十勝農業試験場 研究部   作物科
北海道立北見農業試験場 研究部   小麦科
連絡先 01238-9-2001
0155-62-2431
0157-47-2146
部会名生産環境
流通利用
専門育種対象 小麦分類研究

【 背景・ねらい 】
 低アミロ小麦は道内で年次・地域により多発し大きな問題となっている。そこで、低アミロ耐性品種の育成を目的に、成熟期前後のα−アミラーゼ活性の推移および穂発芽耐性の品種間差を把握するとともに、求められる耐性程度および効率的な検定法を検討する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 成熟期前後のα−アミラーゼ活性の推移はおよそ3つに類型化される。
    1. 成熟期前は粒の尾部でグリーンα-アミラーゼの活性が高いが、その後低下する。
    2. 成熟期以降に降雨に遭うと水分が上昇し、穂発芽が発生するとともに、主として粒の頭部にモルトα-アミラーゼが活性化する。
    3. 成熟期前後に尾部のグリーンα−アミラーゼが比較的高く維持され、さらに成熟期以降にモルトα-アミラーゼが活性化されるため、常に活性が高く維持される。
  2. 成熟期のα-アミラーゼ活性と成熟期以降の穂発芽小穂率との相関は低い(図1)。また、穂発芽粒率と最高粘度との相関も低い(図2)。したがって、成熟期以降の穂発芽耐性とともに、成熟期前後のα-アミラーゼ活性についても検定する必要がある。
  3. 以上のことから、低アミロ耐性品種育成のための検定法を以下に提案する。
    1. 成熟期におけるα−アミラーゼ活性の検定
      1. 十勝の圃場試料:登熟期の気象条件の厳しい十勝におけるα−アミラーゼ活性の 測定。
      2. ポット試料の人工気象処理:登熟後半から人工気象室で低温・多湿処理を行う。
    2. 成熟期以降の穂発芽耐性の検定
      1. 成熟期後の降雨処理:成熟期の2〜3週間後に約4日間の処理(処理温度15〜20 ℃)
      2. 晩刈り:年次・地帯間差が大きいために複数年の検討が必要である。
      3. α−アミラーゼ活性測定:1.、2.と同時に実施することが望ましい。

【 成果の活用面・留意点 】
 低アミロ耐性品種の育成に活用できる。

【 その他 】

研究課題名:高品質小麦の緊急開発−低アミロ小麦の品質・生理特性
予算区分 :道費
研究期間 :平成6年度(昭和63〜平成6年)
研究担当者:中津智史、大村邦男、宮本裕之、天野洋一
発表論文等:中津ら(1994):成熟期前後における小麦αーアミラーゼ活性の推移と品種
      間差異、日本農芸化学会北海道支部合同学術講演会

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.450