道内農耕地からの亜酸化窒素の発生実態
【 要約 】 温室効果ガスである亜酸化窒素の道央及び道南地帯の畑地からの発生は季節及び年次変動を示し,1992年〜1994年の測定によると,農耕期間中の積算発生量は10a当たり29〜1,072gN,同じく平均フラックスは18〜396mgNhr-1の範囲内である。亜酸化窒素の発生には窒素施肥法が影響する。
北海道立中央農業試験場・環境化学部・環境保全科
北海道立道南農業試験場・ 研究部 ・土壌肥料科
連絡先 01238-9-2001(内301)
0138-77-8116
部会名生産環境専門環境保全対象 分類研究

【 背景・ねらい 】
 地球温暖化に深刻な影響を与えることが指摘されている温室効果ガスの一つである亜酸化窒素(N2O)について,農耕地における発生実態を明らかにし,さらに発生に及ぼす窒素施肥の影響を明らかにする。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 標準栽培圃場におけるN2Oフラックスは,火山放出物未熟土では初〜晩春に大きくなり,夏以降は低下する。灰色低地土では農耕期間を通じて火山放出物未熟土より高く,夏以降でも低下する傾向がみられず,むしろ秋に高い年もある(図1)。その他の土壌では,火山放出物未熟土や灰色低地土と類似するか,その中間であることが多い。このようなフラックスの季節変動パタ−ンや大きさは測定年次で異なる。
  2. 1992年〜1994年の測定によると,農耕期間中のN2Oの積算発生量および平均フラックスは,道央地帯では10a当たりそれぞれ74〜1,072gN,18〜396mgNhr-1で,同じく道南地帯の29〜393gN,26〜86mgNhr-1よりも大きい(表1)。
  3. フラックスと土壌水分や地温等の土壌環境要因との対応関係は必ずしも明確ではない。しかし,測定回数の平均値でみると,N2Oの発生は窒素施肥量や土壌中の無機態窒素含量と有意な正の相関が認められる(図2)。
  4. 褐色低地土でハクサイを供試した事例では,N2Oの発生は窒素施肥量が少ないと,また同一窒素量では被覆肥料施与で明らかに減少する。しかし,硝化抑制材入り肥料や化学合成緩効性肥料での発生量は標準(高度化成肥料施与)より高いなど,N2O発生に対する緩効性窒素肥料の効果は必ずしも抑制的でない(図3)。

【 成果の活用面・留意点 】
 本成績のサンプルはチャンバ−法で採取し,N2OはECD付きガスクロマトグラフで分析した。積算発生量はフラックスの推移を積分して求めた。

【 その他 】

研究課題名:クリ−ン農業実現のための環境保全機能の把握と活用
      −農耕地におけるガス発生実態と抑制技術確立−
予算区分 :補助(土壌保全)
研究期間 :平成6年度(平成3年〜6年)
研究担当者:木曽誠二(中央農試),林 哲央(道南農試)
発表論文等:1)北海道の畑土壌から発生する亜酸化窒素(第1報)数種土壌におけるフ
       ラックスの季節変動,日本土壌肥料学会講演要旨集,第39集,1993。
      2)同(第2報)窒素施肥条件を異にするハクサイ畑における推移,同上,
       第40集,1994。
      3)同(第3報)定点観測地における平均フラックスと積算発生量(1992〜
       1994),同上,第41集,1995。
      4)道南地域の野菜畑から発生する亜酸化窒素の実態,同上,第41集,
       1995。
      5)N2O emissions from some cropped soils in Hokkaido, Japan, Inte-
       rnational Workshop on CH4 and N2O in Asian Countries -Emissi-
       onsand Control in Agricultural Field- PROGRAM AND ABSTRACTS(Tsu-
       kuba,Japan),1994。

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.457