夏秋ギクタイプスプレーギクの電照栽培における品種特性
【 要約 】 スプレーギクの夏秋ギクタイプ27品種について、自然日長下における開花期など、開花の特性を調査し、労力を要する短日処理を全く省略した電照栽培において切り花品質、適応性を検討した。
北海道立道南農業試験場・研究部・園芸科 連絡先 0138-77-8116
部会名 作物 専門 育種 対象 花き類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 スプレーギクは最近、全国的に栽培面積が増加した花きである。そのスプレーギクは8〜9月の採花を目標とした場合、秋ギクタイプの品種は大変労力を要する短日処理を行わなければならない。秋ギクタイプより長い日長でも花芽分化する夏秋ギクタイプは電照で開花抑制をすることにより開花調節の可能性が考えられ、短日処理を全く省略した電照栽培において品種の適応性を検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 自然日長下における開花期を調査した結果、8月10日から10月24日であった。カタログ表示より遅い品種が多かった。スプレーフォーメーションは品種によってかなり異なり、「メルヘン」、「ハーモニー」、「オーロラ」、「パレード」、「ゴージャス」、「ラブリー」が比較的良好であった。20゜C24時間日長下で出蕾した品種が多く、これらの品種は電照下で栽培しても植物体が成熟すると花芽分化する性質をもつものと推測された。
  2. 電照栽培において、消灯前に出蕾した品種が多く、これらの品種は仕立て等の作業が難しかった。
  3. 平成6年には定植を平成5年より約1週間早く行った結果、ほとんどの品種で開花始が遅かった。その中で「ラブリー」、「グリーンバード」は両年とも開花始が変わらなかった。この2品種は供試品種の中では比較的開花期が遅く、開花が日長の影響を強く受ける秋ギクタイプの性質が強いと考えられた。
  4. 平成5年では「ニース」、「ケベック」はロゼット化したまま頂花が開花せず、切り花は得られなかった。開花が遅かった平成6年では、5年に比べ規格内本数が多く、2L(80cm)の割合も高かった。両年を通じて「ゴージャス」、「オリエント」は規格外の割合が高かった。平成5年のスプレーフォーメーションはA〜Bの割合が大きく良好であったが、平成6年のスプレーフォーメーションはC〜Dの割合が大きかった。品種では「ニース」、「ラブリー」、「メルヘン」、「オーロラ」、「ファンタジー」、「ケベック」がスプレーフォーメーションが良好であり、C〜Dの発生がほとんどなかった。

【 成果の活用面・留意点 】
 夏秋ギクタイプのスプレーギクの電照栽培における品種選定のための資料とする。

【 具体的データ 】


 夏秋ギクタイプスプレーギクの品種特性表
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         自然     電 照 栽 培 に お け る 特 性
花色 品種名          消灯〜  開花始(月日) 切花長(cm) S.F.の 電照下の
         開花期  開花日数 H5年  H6年  H5年  H6年 C+D割合 出蕾状況
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白 
    ゴージャス   8.17   40   9. 3  9. 1  46.5  43.4  55   1
  レイク     8.19   55   9. 3  9.16  54.1  63.2  42   1
  ホワイト     -   58    -  9.19   -  91.1  47   1
   サマー
  モーニング   9.12   58   9. 7  9.19  87.3  78.4  47   2
   ホワイト
  ケルン     9.20   61   9. 7  9.22  50.3  82.0  37   3
  ニース     9. 7   65    -  9.26   -  113.6  4   1
  マーガレット  9.24   65   9.10  9.26  65.1 103.4  2   1
  マム
黄 
    マリーン    7.22   40   8.31  9. 1  57.6  43.8  63   3
  レモネード   8.22   65   9. 3  9.26  53.6  55.2  61   2
  コスチューム   -   67    -  9.28   -  120.8  77   1
  オリエント   8.10   65   9. 3  9.26  32.7  35.5  64   3
  ピエロ     10. 3   67   9.10  9.28  77.6 110.9  51   1
  ラブリー    9.28   67   9.28  9.28 115.8 121.1  4   1
  メルヘン    9.19   65   9.14  9.26  81.1 120.5  0   1
ピンク 
    モニカ     9. 6   45   8.22  9. 6  53.1  52.2  77   3
  イブ       8.10   51   8.22  9.12  61.2  64.0  58   3
  G7        8.10   65   9. 7  9.26  67.7  79.8  63   2
  ハーモニー   8.22   51   8.31  9.12  54.5  54.8  71   3
  オーロラ    8.31   51   9. 3  9.12  45.9  65.4  2   1
  レインボー   9.19   67   9.10  9.28  89.7  96.1  37   2
  ファンタジー   9.25   67   9.17  9.28  70.4 110.7  2   1
  パレード    9.30   74   9.20 10. 5  68.0 107.2  12   1
  ハート      -   69    -  9.30   -  113.9  97   2
  モナミ      -   83    -  10.14   -  149.5  35   1
オレンシ 
  ケベック    9.23   72    -  10. 3   -  121.8  0   1
  カーニバル   9.29   72   9.14 10. 3  62.5  95.5  85   2
緑 
  グリーンバード10.24   83  10.15 10.14  98.5 127.9  7   1
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 注)S.F.:スプレーフォーメーション
   自然開花期、消灯〜開花日数、S.F.のC+D割合は平成6年の調査による
   電照下の出蕾状況:平成5、6年通じて消灯前に出蕾しなかった品種   1
            平成5年あるいは6年に消灯前に出蕾した品種    2
            平成5、6年通じて消灯前に出蕾した品種         3

【 その他 】

研究課題名:スプレーギクの品種特性調査
予算区分 :道費
研究期間 :平成6年度(平成5〜6年)
研究担当者:立川さやか・加藤俊介・稲川 裕・川岸康司

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.90