秋ギクタイプスプレーギクの夏秋採花技術
【 要約 】 秋ギクタイプスプレーギクのシェード栽培では、親株の15℃加温、電照を3月上旬から行い、定植後の短日処理は、摘心25日後から花蕾着色期まで行う。季咲き栽培では、採穂株として越冬株の直接利用が可能で、定植期は7月30日前後、栽植密度は1905株/a程度とし、育苗中・定植後とも電照は必要ない。
北海道立道南農業試験場・研究部・園芸科 連絡先 0138-77-8116
部会名 作物 専門 栽培 対象 花き類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 スプレーギクは花色、花型が多彩で、花持ちが良く、あらゆる用途に適し、最近、全国的に栽培面積が増加した花きである。最初に欧米から導入されたのは秋ギクタイプで、現在でも主要品種となっているほとんどが同タイプである。この秋ギクタイプは耐暑性が弱く、暖地での夏季生産は困難である。そこで本道の気候条件を生かし、夏秋期の出荷を狙って、秋ギクタイプの8〜9月採花のシェード栽培と10〜11月の季咲き栽培において省力で、高品質な切り花を生産するための栽培法を検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. シェード栽培
    1. 短日処理期間切り花長80cmを目標にした場合、摘心25日後(茎長15〜25cm)から開始し(表1)、花蕾着色期まで行う必要がある。
    2. 短日処理時期と開花時期・切り花品質定植期と短日処理時期を変えることにより8〜10月の継続採花が可能であるが、年または品種によりスプレーフォーメーションにばらつきがみられる(表2)。
    3. 親株の加温開始時期は早めのほうがよく、管理適温は15℃である。
    4. 品種供試13品種の中では、「マイアミ」・「ホワイトピンキー」が、切り花品質が比較的安定し栽培しやすい。
  2. 季咲き栽培
    1. 定植適期 7月30日前後であるが、品種の特性を加味して決める必要がある(表3)。
    2. 栽植密度及び仕立て法 1905株/aの3本仕立てが、規格内本数が多く、スプレーフォーメーションが安定する。
    3. 親株養成 採穂用親株(当年株)の養成は省略可能で、前年採花した越冬株が直接利用できる。
    4. 電照 育苗中、定植後いずれにおいても効果は認められず、不要と考えられる。
    5. 品種 供試13品種の中では、「ホワイトピンキー」・「スワン」・「マイアミ」・「ムーンライト」が、切り花品質が比較的安定し栽培しやすい。

【 成果の活用面・留意点 】
 品種特性を把握した上で栽培スケジュール、温度管理、栽植密度を決定する。

【 具体的データ 】


 表1 シェード栽培の摘心後短日処理開始時期別の採花調査結果(1992)
              開花始  2L(80cm) スプレーフォーメーション
 品種名    処理区              ----------------------
              (月日)  割合(%)   A  B  C  D
 ドラマ   摘心後20日目  8. 2    5    28  51  21  0
 ティック     25    8. 8    83    60  4  24  12
          30    8.16    89    59  4  24  12
 カナリア  摘心後20日目  8.12    24    89  11  0  0
          25    8.16    97    71  29  0  0
          30    8.23    93    84  16  0  0
 注)スプレーフォーメーション:A:円錐(筒)形 B:平型 C:頂花短形 D:頂花座止
          (AとBは商品性が高いが、CとDは商品性が劣る)

 表2 シェード栽培の短日処理による開花調節とスプレーフォーメーション
        定植期    短日処理   開花始 スプレーフォーメーション
 品種名          開始  終了      ------------------------
       (年月日)  (月日) (月日)  (月日)  A  B  C  D
 ドラマ    H3. 7.10   8.23  9. 3  10.14  100  0  0  0
 ティック   H3. 7. 1   8.14  9. 3  10.10  100  0  0  0
       H4. 6.19   8. 2  9.17   9.17   14  48  38  0
       H4. 6. 2   7.13  9. 7   9. 7   28  26  44  2
       H5. 5.31   7. 9  8.23   8.27   76  0  24  0
       H5. 5.12   6.21  7.30   8. 8   60  4  24  12
       H6. 5. 9   6.14  8. 4   8.10   82  9  6  3
 カナリア   H3. 7.10   8.23  9. 3  10.23  100  0  0  0
       H3. 7. 1   8.14  9. 3  10.10  100  0  0  0
       H4. 6.19   8. 2  9.17   9.21   13  88  0  0
       H4. 6. 2   7.13  9. 7   9.14   17  78  2  6
       H5. 5.31   7. 9  8.23   9. 7   83  17  0  0
       H5. 5.12   6.12  7.30   8.16   71  29  0  0
       H6. 5. 9   6.14  8. 4   8.22   28  61  11  0

 表3 季咲き栽培の定植期別の採花調査結果(1992)
       定植期   開花始  2L(80cm)  スプレーフォーメーション
 品種名                  --------------------------
       (月日)   (月日)  割合(%)    A  B  C  D
 ドラマ    7.10   10.19   100      0  0  0 100
 ティック   7.20   10.19   100     15  4  70  10
        7.30   10.22    34     55  18  27  0
 カナリア   7.10   11. 2   100     67  31  0  2
        7.20   11. 2   100     91  9  0  0
        7.30   11. 4    77     61  39  0  0

【 その他 】

研究課題名:スプレーギクの栽培法確立試験
予算区分:道費
研究期間:平成6年度(平成3〜6年)
研究担当者:立川さやか・加藤俊介・沢田一夫・稲川 裕・川岸康司
発表論文等:北海道におけるスプレーギクの栽培に関する試験(第2報)シェード9月
      出し栽培におけるシェードの時期及び期間について、北海道園芸研究談話
      会報、第26号、1993

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.105