アスパラガスの収量衰退現象と対策
【 要約 】 近年、北海道各地で問題になっているアスパラガスの収量衰退現象の病因には、斑点病とフザリウム病が関与している。斑点病の薬剤散布開始期の目安は発病度12.5である。拮抗細菌によるフザリウム病に対する生物防除効果を確認した。
北海道立中央農業試験場 病虫部 病理科、土壌微生物科
北海道・農政部・農業改良課
連絡先 01238ー9ー2001
部会名 生産環境 専門 作物病害 対象 葉菜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 北海道ではアスパラガスは栽培面積が多く、また、特産品として位置づけている地域も多いため重要な作物である。しかし、最近各産地において収量の低下が著しい収量衰退現象が生じているため、その実態と要因の解明および防除対策を検討する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 収量衰退ほ場では地上部には斑点病が、地下部にはフザリウム菌による病害が発生していた。これらが単独あるいは併発することにより、アスパラガスの収量が低下する。
  2. 斑点病は全道的に発生しており、主に成茎、分枝、擬葉に病斑を作る。病斑が拡大するとその上部は枯死、落葉するため、アスパラガスは早期に枯れあがる。
  3. 斑点病菌の完全時代(子のう殻)は10〜11月に形成され、冬期積雪下で成熟する。
  4. 収穫畑での斑点病菌の分生胞子の飛散は、8月中旬以降に最盛期を迎える(図1)。分生胞子の飛散は降雨により促進される。
  5. 斑点病の薬剤散布開始期の目安は、発病度で12.5(主茎に病斑が散見)の時である(図2)。斑点病を防除すると、翌春の若茎の萌芽数と収量は増加する。この増収効果は毎年斑点病を防除することにより累積する(表1)。
  6. 斑点病にはTPN水和剤、フルアジナム水和剤、イミノクタジンアルベシル酸塩水和剤が有効である。
  7. 地下部の症状は、冠・根部の褐変、腐敗であり、萌芽不良や株全体の生育が不良となる。冠・根部からは病原性のあるFusarium moniliformeとF. oxysporumが高率に分離される。F. moniliformeのほうがF. oxysporumよりも病原性が強い(表2)。
  8. アスパラガス根面から捕捉した拮抗細菌は、ポット試験ではフザリウム病に対する防除効果が認められる。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 斑点病菌の完全時代が明らかにされたが、種名が未同定のため、菌名は当面従来のStemphylium botryosumとする。
  2. 10月下旬まで茎葉を枯死させないことを目標とした、斑点病に有効な薬剤による防除を行う。
  3. フザリウム病に対する拮抗細菌による生物防除の実用化の検討が必要。

【 その他 】

研究課題名:アスパラガスの収量衰退現象の解明と対策試験
予算区分 :道費
研究期間 :平成6年度(平成3年〜6年)
研究担当者:児玉不二雄、安岡眞二、宮島邦之、田村修、角野晶大、尾崎政春
発表論文等:○アスパラガス斑点病防除と収量、日植病報、58巻P148(講要)、1992
        ○アスパラガス斑点病菌(Stemphylium botryosum)の分生胞子の飛散について、
         日植病報、59巻P300(講要)、1993
        ○Fusarium moniliformaeおよびF. oxysporumによるアスパラガスの衰退現象、
         日植病報、59巻P766(講要)、1993

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.152