メロンの萎ちょう性病害の北海道における発生分布と防除対策
【 要約 】 北海道で発生するメロンの主要な萎ちょう性病害は半身萎ちょう病とつる割病であり、つる割病ではレース0および1、2の2レースが分離される。両病害の防除には抵抗性(耐病性)品種の利用および土壌消毒処理が有効である。
北海道立中央農業試験場・病虫部・土壌微生物科・病理科
ホクレン農業総合研究所・土壌・作物栄養科
連絡先 01238-9-2001
011-742-5438
部会名 生産環境 専門 作物病害 対象 果菜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
近年、北海道において発生が目立つメロンの萎ちょう性病害の主原因を明らかにし、抵抗性品種の導入を含めた、総合的な防除方法を確立する。

【 成果の内容・特徴 】

    1.  北海道で発生するメロンの萎ちょう性病害は半身萎ちょう病、つる割病、つる枯病および菌核病である。そのうち主要病害は半身萎ちょう病とつる割病で全道的に 発生している(図1、2)。
    2.  北海道のつる割病菌には「萎ちょう型」と「黄化型」の病徴を示す系統が認められる。道内各地から分離したつる割病菌をRisserら(1976)の分類に従ってレース検定を行なうと、「萎ちょう型」はレース0、「黄化型」はレース1、2に相当する。レース1、2は夕張市の罹病株からのみ分離され、レース0は夕張市を除く全道各地から分離される(表1)。
    3.  メロン半身萎ちょう病およびつる割病抵抗性の第一次選抜に適しているのは浸根接種法であり、両病原菌の接種菌密度はそれぞれ107および106個/mlで、浸漬時間2時間が適当である。
    4.  メロン半身萎ちょう病およびつる割病菌レース0に抵抗性(耐病性)を示す品種が存在する(表2)。しかし、つる割病菌レース1、2に抵抗性を示す品種は認められない。
    5.  ダゾメット粉粒剤の土壌処理はメロン半身萎ちょう病およびつる割病防除に有効であり、本剤の深耕処理によってメロン半身萎ちょう病に対する防除効果が増大する。

    【 成果の活用面・留意点 】

    1. メロン半身萎ちょう病
      1.  抵抗性(耐病性)品種および台木を栽培、利用できる。
      2.  ダゾメット粉粒剤の処理はメロン半身萎ちょう病に対して有効で、その防除効果は深耕処理により増大する。
    2. メロンつる割病
      1.  レース0の発生地では、抵抗性品種および台木を利用できるが、レース1、2には現在のところ抵抗性品種はない。
      2.  ダゾメット粉粒剤処理はメロンつる割病に対して有効である。
    3. メロン半身萎ちょう病およびつる割病の発生地においては、ダゾメット粉粒剤処理によって病原菌密度を低下させた後、抵抗性(耐病性)品種および台木を利用することが望ましい。

    【 具体的データ 】

    
       表1 メロンつる割病菌レースの分布
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       菌株番号 レース 分離年  場所
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         63  0  1991 旭川市
         99  0  1991 門別町
        150  0  1992 北村
        154  0  1992 芦別市
        179  0  1992 月形町
        256  0  1992 深川市
        259  0  1992 深川市
        375  1,2 1993 夕張市
        396  1,2 1993 夕張市
        427  0  1993 栗沢町
        441  1,2 1993 夕張市
        529  1,2 1994 夕張市
        531  1,2 1994 夕張市
        533  1,2 1994 夕張市
        537  1,2 1994 夕張市
        539  1,2 1994 夕張市
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         表2 メロン半身萎ちょう病ならびにつる割病抵抗性(耐病性)品種
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           半身萎ちょう病          つる割病(萎ちょう型)
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    「北紅クイン」、「キングメルティ」、「試交2M-32」   「デリカ」、「コロナ」、「強栄」、
    「ルピアレッド」、「キングナイン」、「シャロン」、   「天恵」、「ルピアレッド」、
    「アリス」 「デリカ」、「サッポロレッド113」     「キングナイン」、「バーデーレッド」
    「OKW(台木)」、「US2号(台木)」          「クルーガー」、「ローラン」
    「北紅クイン(台)+ルピアレッド(穂)」      「アンデス」、「シャロン」
    「試交2M-32+ルピアレッド」、            「北海レッド」
    「北紅クイン+試交2M-32」
    「北紅クイン+キングナイン」、
    「試交2M-32+キングナイン」
    「キングナイン+キングメルティ」、
    「北紅クイン+キングメルティ」
    「試交2M-32+キングメルティ」
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    【 その他 】

    研究課題名:メロンの萎ちょう性病害の道内における分布と防除対策
    予算区分 :共同研究
    研究期間 :平成6年度(平成3年〜平成6年)
    研究担当者:田村 修、角野晶大、田中民夫、岩田康広、林 恵美、大上大輔、
           五十嵐文雄、花田茂比古
    発表論文等:北海道で発生したメロンつる割病菌の新系統について、北日本病虫研報、
           45巻、1994。北海道におけるメロンつる割病菌Fusarium oxysporum
           f.sp. melonisのレースについて、日植病報、60巻、1994。

            「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.155