各種窒素肥料を施用したタマネギ畑暗渠からの硝酸態窒素の流出
【 要約 】 緩効性窒素肥料の緩効的効果は、収穫時までは認められる。しかし、収穫以降も含めると、緩効性窒素肥料を施用した区の暗渠から流出する硝酸態窒素量は、窒素施用量が同一の場合、高度化成肥料区と同等である。
北海道立中央農業試験場・環境化学部・環境保全科 連絡先 01238-9-2001
部会名 生産環境 専門 環境保全 対象 根菜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 農業由来の環境汚染として硝酸態窒素による地下水汚染が問題になりつつある。そこで、農地からの硝酸態窒素流出を抑制する技術を確立するための基礎的知見を得るために、緩効性窒素肥料を施用した圃場からの硝酸態窒素の流出を調査する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 各種窒素肥料の土壌カラムからの流出率は、かん水処理終了時(40mm×25回、7日間断)には、硝酸化成抑制材入り肥料>硫安≒被覆肥料30日タイプ>化学合成緩効性肥料>被覆肥料70日タイプの順である。流出時期は、緩効性窒素肥料の中では硝酸化成抑制材入り肥料が早く、被覆肥料70日タイプが最も遅い。
  2. 土壌、土壌溶液および地下水中の硝酸態窒素濃度は、一般に硝酸化成抑制材入り肥料施用区(硝化抑制区)および被覆肥料70日タイプ施用区(被覆肥料区)が高度化成区より低く推移する(図1、2)。
  3. 暗渠排水中の硝酸態窒素濃度は硝化抑制区が高度化成区より高い傾向を示す。一方、被覆肥料区は逆に高度化成区よりも低く推移する。
  4. 暗渠からの硝酸態窒素の流出量は、硝化抑制区が高度化成区より多く、それぞれha当たり58kgN(施用窒素量の26%)、32kgN(同15%)である。
  5. 被覆肥料区の硝酸態窒素の流出量は、収穫時まででは高度化成区より少ない。しかし、両区とも収穫以降も硝酸態窒素の流出が認められ、特に1994年では被覆肥料区からの流出量が多い(図3)。
  6. 硝酸態窒素の調査期間中の総流出量は、1993年では被覆肥料区がha当たり41kgN(施用窒素量の19%)、高度化成区が54kgN(同25%)、同じく1994年ではそれぞれ45kgN(同20%)、37kgN(同17%)である(図4)。
  7. 以上から、暗渠からの硝酸態窒素の流出量は、窒素施用量が同一の場合、緩効性窒素肥料も一般化成肥料とほぼ同等になると考えられる。したがって、緩効性窒素肥料の利用に当たっては、肥料の特性を十分考慮した上での施肥量の適正化が重要である。

【 成果の活用面・留意点 】
 本試験は220kgNha-1を施用したタマネギ畑(灰色低地土、転換畑)における試験事例 である。

【 その他 】

研究課題名:施肥にともなう環境負荷軽減技術実証(肥効調節型肥料導入実験事業)
予算区分 :補助(国費)
研究期間 :平成6年度(平成3年〜6年)
研究担当者:甲田裕幸、木曽誠二、佐藤龍夫
発表論文等:甲田ら(1994):緩効性肥料を施用したタマネギ畑における養分フロー
       1.硝化抑制剤入り肥料施用下での硝酸態窒素の流出、日本土壌肥料学会
       北海道支部秋季大会講演要旨集

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.304