コンベンショナル養豚場におけるSPF種豚の導入技術
【 要約 】 SPF種豚をコンベンショナル養豚場に導入する場合に発病する危険性の高い H. parasuis 感染症等の各種感染症を予防または症状を緩和することを目的として、「導入前のワクチン接種」と「導入後の抗生物質の飼料添加」および「発熱豚に対する治療」を組み合わせた馴致導入法を開発し、マニュアルを作成した。
北海道立滝川畜産試験場・研究部・衛生科、養豚科 連絡先 0125-28-2211
部会名 畜産・草地 専門 診断予防 対象 家畜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 近年、全国的にSPF種豚の生産が増大し、北海道においてもホクレン農業協同組合連合会が大ヨークシャー種系統豚ハマナスW1の維持・増殖をSPF環境下で実施している。それにともない、SPF種豚の新たな利用法として“病気を持ち込まない種豚”として在来の養豚場(コンベンショナル農場)へ導入することが検討されはじめた。
 SPF豚をコンベンショナル農場に導入する場合、受け入れ農場に常在し、かつ導入SPF豚が保有していない病原に初感染し発病する危険性がある。そこで、本試験では導入時の発病を阻止または緩和させるいわゆる馴致法の確立をめざした。

【 成果の内容・特徴 】

  1. H.parasuis(Hps)、B.bronchiseptica(Bb)、P.multocida(Pm)、A.pleuropneumoniae(App)、M.hyopneumoniae(Mhp)の浸潤が認められるコンベンショナル農場9場に「ワクチン接種」および「抗生物質の飼料添加」の疾病予防処理を組み合わせて40頭のSPF豚を導入したところ、ほとんどの豚が発熱以外の臨床症状を示さず、と殺時にその60%が病変を保有しなかった(表1)。特にHps感染症は、26頭の豚で抗体価の上昇が認められたにも関わらず、病変保有豚は3頭であった。したがって、この方法に治療を加えることによりSPF種豚の導入が可能と考えられた。
  2. Hps感染症ワクチンの接種間隔は、2〜4週の間では4週間隔が望ましいことを示した。
  3. 血清型2型株によるHps感染症に対して血清型5型株を用いた市販ワクチンは十分な防御効果を示さなかった。そこで、その治療法を検討したところ、40.0゜C以上の発熱を確認後24時間以内であれば治療効果が期待でき、また本症の早期発見に体温測定が有効であることを明らかにした。
  4. 上記成績に基づいた方法でコンベンショナル農場に導入された178頭のSPF種豚について、導入後の転帰を調査したところ、馴致の失敗=呼吸器疾患による廃用・死亡した豚は15頭(8%)で、他の理由で廃用・死亡した16頭を除く147頭が生産に供されていおり、この水準でのSPF種豚の利用が可能であることが示された(表 2)。
  5. 以上の成績をもとに、SPF種豚の馴致導入マニュアルを作成した(図1)。

【 成果の活用面・留意点 】
 抗生物質・ワクチンは、獣医師の処方せん・指示により使用すること。また導入開始前に緊急の治療に対応できる体制を確保すること。

【 その他 】

 研究課題名:清浄種豚の有効活用技術の確立に関する試験
 予算区分 :民間共同
 研究期間 :平成6年度(4〜6年)
 研究担当者:仙名和浩、及川学、芹川慎、米道裕弥、山崎昶

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.342