サイレージ利用による乳用育成牛の飼養技術
【 要約 】 乳用育成牛の粗飼料として牧草サイレージまたはとうもろこしサイレージを給与して、従来の乾草による育成と比較検討した。牧草またはとうもろこしサイレージの給与によって飼料摂取量・反芻胃発達に問題はなく、乾草給与と同等以上の発育が得られる。
北海道立根釧農業試験場 研究部 酪農第一科
北海道立新得畜産試験場 家畜部 酪農科
連絡先 (01537)−2−2004
(01566)−4−5321
部会名 畜産・草地(畜産) 専門 飼育管理 対象 家畜類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 泌乳牛に給与する粗飼料は、根釧地方では牧草サイレージ、十勝地方ではとうもろこしサイレージが中心となっているが、育成牛に給与する場合は反芻胃発達への悪影響への懸念や、摂取量や栄養バランスの問題が指摘され、乾草を給与することが推奨されてきた。しかし、サイレージの利用によって飼料調製作業の簡素化や、高品質粗飼料の給与による発育の向上等の可能性が考えられることから、牧草およびとうもろこしサイレージの給与が飼料摂取量、反芻胃発達および発育に及ぼす影響を明らかにし、飼料給与指標を作成する目的で試験を行った。

【 成果の内容・特徴 】
試験I.飼料摂取量および発育に対する牧草サイレージの給与効果

  1. 6週齢離乳、濃厚飼料定量給与のもとで、牧草サイレージの給与効果を乾草と比較した。粗飼料のTDNおよびCP含量は哺育期では牧草サイレージがそれぞれ64、12%、乾草が62、11%、育成前中期では牧草サイレージ、乾草ともに61、10%であった。
  2. 哺育期(表1)および育成前中期(表3)の粗飼料乾物摂取量は牧草サイレージ区(S区)が乾草区(H区)よりやや多かった。両区のTDN摂取量は、日本飼養標準の日増体量0.7kgの要求量をほぼ満たしたのに対し、CP摂取量は要求量を上回った。
  3. S区およびH区の発育は良好で、体重はホル協発育値の上限に近くなり(図1)、育成中期までの日増体量はS区がH区を上回った(0.88、0.84kg/d)。体高の発達もホル協発育値の平均を上回り、S区がH区を上回る傾向がみられた。
  4. 以上の結果から、乳用育成牛に哺育期から牧草サイレージを給与しても問題はみられず、養分含量の高い粗飼料を給与するという点で有効である。
試験II.反芻胃発達・発育および初産泌乳に対するとうもろこしサイレージの給与効果
  1. 6週齢離乳した子牛にとうもろこしサイレージと乾草を乾物比で1:1で混合給与し、乾草の単用と比較した。濃厚飼料の給与量は日増体量が0.7kgになるように調節した。
  2. 3および6カ月齢時の屠殺試験(表2)、腹囲および第1胃性状から、とうもろこしサイレージ給与区(CS区)の反芻胃発達は乾草給与区(乾草区)に劣らなかった。
  3. CS区の乾物摂取量(表3)および乾物消化率は乾草区と同様であった。育成期全般の濃厚飼料乾物給与量はCS区、乾草区でそれぞれ599、900kgで、CS区で約2.6万円の育成期飼料費の節減効果があった。
  4. CS区の体重は乾草区を上回り(図2)、体高は乾草区と同等以上であった。
  5. 初産泌乳成績は305日FCMでCS区7,299kgと乾草区6,408kgより約14%高く、乳蛋白質率もCS区が高かった。
  6. 以上の結果から、育成期のとうもろこしサイレージ給与は、反芻胃発達や発育に問題なく、育成費用ではむしろ有利であり、高発育による初産乳量の向上効果が期待できる。

【 成果の活用面・留意点 】
 育成期のサイレージ給与にあたっては、粗飼料品質および給与形態を考慮する必要がある。

【 その他 】

研究課題名東北・北海道地域の飼養形態に適応した反芻胃機能促進による乳牛育成技術の確立
予算区分国費補助(地域重要)
研究期間平成6年度(平成3〜5年度)
研究担当者関口久雄・沢口正利・八田忠雄・小倉紀美・峰崎康裕・西村和行・小関忠雄・藤田眞美子・花田正明・所 和暢・遠谷良樹・原 悟志・大坂郁夫・糟谷広高・黒沢弘道
発表論文等 「哺育期の牧草サイレージの給与が養分摂取量および発育に及ぼす影響」第86回日本畜産学会大会口頭発表
「牧草サイレージ主体飼養における乳用育成牛の養分摂取量および発育」第88回日本畜産学会大会口頭発表
「とうもろこしサイレージ主体給与が、乳用後継牛の発育および乳生産のに及ぼす影響」第88回日本畜産学会大会口頭発表

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.349