根釧地域における熟期別チモシー品種に対応したマメ科牧草との採草型組合せ
【 要約 】 チモシー極早生および早生品種には、「ホクセキ」のような草勢の穏やかなアカクローバ品種とラジノ型シロクローバ品種との組合せが妥当である。また、チモシー中生および晩生品種には草勢の穏やかなコモン型シロクローバ品種との組合せが妥当である。
北海道立根釧農業試験場・研究部・作物科 連絡先 01537-2-2004
部会名 畜産・草地(草地) 専門 栽培 対象 牧草類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 根釧地域における早晩性の異なるチモシー品種に対する適正なマメ科草種・品種の組合せ法および播種量を明らかにするとともに、熟期別のチモシー主体草地の年間刈取りスケジュールを策定する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. アカクローバ品種の混播適性は、倍数性よりむしろ2番草の草勢(収量、草丈および開花程度などが指標となる)の強弱の違いによって決まる。
  2. 現在のアカクローバ優良品種の中では、「ホクセキ」および「タイセツ」は草勢の穏やかな品種であり、「スタート」、「メルビー」および「レッドヘッド」は草勢の旺盛な品種である。
  3. チモシー極早生品種に対しては、「ホクセキ」のようなアカクローバ品種とラジノクローバ品種との組合せが妥当である。しかし、出穂始刈りではアカクローバの衰退が早く、アカクローバの維持を考慮すると出穂期刈りが有効である。
  4. チモシー早生品種に対しては、「ホクセキ」のようなアカクローバ品種とラジノクローバ品種との組合せで、出穂始から出穂期の刈取りとすると、草種構成割合の変動が比較的少なく、チモシー割合が高く維持される。また、「レッドヘッド」のような草勢の旺盛なアカクローバ品種と混播する場合にはアカクローバの播種量を0.2kg/10a以下にする必要がある。
  5. チモシー中生および晩生品種に対しては、現状のアカクローバ品種はチモシーへの抑圧が大きい。チモシーの維持を考慮すると、草勢の穏やかなコモン型シロクローバ品種との組合せが現段階では妥当である。
  6. チモシーの播種量は、1.2〜1.8kg/10aの範囲内であれば十分な定着が得られ、実用上の問題はない。
 以上の結果に基づき、熟期別のチモシー品種に対するマメ科草種・品種の混播組合せおよび播種量を示せば表1のとおりとなる。また、この組合せによる年間の刈取りスケジュールは図1のとおりとなる。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 根釧地域のチモシー主体草地に適用する。
  2. 丁寧な播種床造成と覆土・鎮圧に留意する。

【 具体的データ 】

表1 チモシー品種とマメ科草品種の組合せと播種量
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     マメ科草種  アカクローバ品種       シロクローバ品種
 チモシー品種     (0.2〜0.4kg/10a)        (0.3kg/10a)
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 チモシー      草勢の穏やかな品種     ラジノ型シロクローバ
    極早生品種
 (1.2〜1.8kg/10a)  (「ホクセキ」など)  (「カリフォルニアラジノ」など)
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 チモシー      草勢の穏やかな品種     ラジノ型シロクローバ
    早生品種    を主体とする*
 (1.2〜1.8kg/10a)  (「ホクセキ」など)  (「カリフォルニアラジノ」など)
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 チモシー                  草勢の穏やかな
    中生品種     --------        コモン型シロクローバ
 (1.2〜1.8kg/10a)                (「ソーニャ」など)
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 チモシー                  草勢の穏やかな
    晩生品種     --------        コモン型シロクローバ
 (1.2〜1.8kg/10a)                (「ソーニャ」など)
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  備考)括弧内の数字は各草種の播種量および組合せにおける代表品種を示した。
    *:草勢の旺盛なアカクローバ品種に置き換える場合は、アカクローバ播種量を
    0.2kg/10a以下にすること。

【 その他 】

研究課題名道東地域におけるチモシー品種とマメ科草品種の採草型組合せに関する試験 2.根釧地域向け品種組合せに関する試験
予算区分道費
研究期間平成6年度(平成2年〜6年)
研究担当者中島和彦、竹田芳彦、堤光昭
発表論文等 混播草地におけるチモシーおよびマメ科草種の動態1、2、北草研報、25、26(1991,92)
混播草地におけるチモシーおよびマメ科草種の動態3、日草誌、38別、(1992)
混播草地におけるチモシーおよびマメ科草種の動態4、5、北草研報、27、(1993)
根釧地域におけるチモシー主体草地の草種・品種組合せ、日本草地学会第41回大会発表予定、(1995)

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.352