天北地域における採草用イネ科牧草の栄養価
【 要約 】 オーチャードグラス、チモシーとも、生育時期の進行に伴うTDN含有率の低下は1番草よりも2番草でやや遅かった。人工乾物消化率が全番草で60%以上かつ平均乾物消化率が65%以上の刈取りスケジュールには、オーチャードグラス2品種ではキタミドリで2つ、チモシー3品種ではクンプウで1つが該当した。
北海道立天北農業試験場・研究部・草地飼料科 連絡先 01634-2-2111
部会名 畜産・草地 専門 栽培 対象 牧草類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 厳しい酪農情勢の中で天北酪農が飛躍するためには、放牧地の集約利用に加えて、採草地利用の一層の改善が必要である。そこで、天北地域における主要な採草用イネ科牧草の栄養価を生育時期と刈取りスケジュールの面から明らかにする。

【 成果の内容・特徴 】

  1. めん羊を用いた消化試験によりオーチャードグラス(OGと略す、品種オカミドリとチモシー(TYと略す、品種ノサップ)の栄養価を生育時期別に検討した。
    刈取り時期を早刈、中刈、遅刈と異にした1番草のTDN含有率は、OGでは出穂始に相当する早刈が71%、出穂始の20日後に相当する遅刈が57%で、1日当たり約0.7%低下し、TYでは早刈が66%、遅刈が55%で、1日当たり約0.5%低下した。1番草の刈取り時期が異なっても、同じ生育日数(OG:41日、TY:55日)で刈取った2番草のTDN含有率は両草種とも59%前後であった。(図1)
    1番草を早刈した後、生育日数を30日、40日、50日と異にして刈取った2番草のTDN含有率は、OGでは30日刈が64%、50日刈が55%、TYでは30日刈が71%、50日刈が63%であり、両草種とも1日当たり約0.4%低下した。TYの1番草早刈〜2番草40日刈〜3番草45日刈の例では全番草のTDN含有率が65%を超えた。(図2)
  2. OGの2品種(キタミドリ、オカミドリ)とTYの3品種(クンプウ、ノサップ、ホクシュウ)について、T&T法による人工乾物消化率を指標として刈取りスケジュール別に栄養価を検討した。
    1番草の人工乾物消化率はOGの両品種では出穂期まで65%以上であったが、TYではクンプウとノサップの出穂始でのみ65%以上であった。TYでは3番草でもほぼ65%以上であった。(表1、2)
    全番草で60%以上かつ平均乾物消化率が65%以上の刈取りスケジュールには、OGではキタミドリの1番草を出穂始、2番草を35日または45日で刈取るスケジュールが該当し、TYではクンプウの1番草を出穂始、2番草を45日で刈取るスケジュールが該当した。(表1、2)

【 成果の活用面・留意点 】

  1. OGでは早生品種と中生品種に適用する。
  2. 1番草の刈取りが出穂始以降の場合に適用する。
  3. TYの栄養価優先の刈取りでは地下茎型イネ科雑草侵入の恐れがある。

【 その他 】

 研究課題名:天北地域における高栄養粗飼料生産草地の維持管理試験
       1)高栄養価粗飼料生産のための刈取りスケジュール確立試験
 予算区分:道費
 研究期間:平成6年度(平成元〜6年)
 研究担当者:寒河江洋一郎・住吉正次・石田 亨・川崎 勉・坂東 健・裏 悦次
 発表論文等:

        「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.355