新規参入酪農経営の成立条件と地域支援のあり方
【 要約 】 実態調査に基づき新規参入を目指した就農希望者および地域・農業関係機関の取るべき対応や課題を明らかにし、参入希望者への対応や指導の方向、地域支援体制のあり方、ライフサイクルを重視した経営指導の必要性を提示した。
北海道立根釧農業試験場・研究部・経営科 連絡先 01537-2-2004
部会名 農村計画(農業経営) 専門 経営 対象 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 近年、北海道の酪農地帯においても担い手の減少が農業後継者の減少や高齢化として現われている。そのため、従来の後継者の確保の他に農外からの担い手の確保が注目され、その受入が進んでいる。しかし、酪農を始めるに当っては多額の資金が必要となることや技術修得、また、参入希望者の受入体制も必ずしも整っていない。
 そのため新規参入経営の確立とともに地域での受入・支援体制のあり方、その方向性どを北海道東部のA町農協に所属する8戸の事例を対象に検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 新規参入経営は夫婦2人の営農で乳幼児を抱える場合が多く、労働の量・質ともに問題がある。また、自己資金が無く、参入への資金対応は農場リース事業を利用するとともに調査事例では5,000万円程度の制度資金を借入している。
  2. 営農のための技術修得は農家実習に依存するが、その評価は高くない。調査地区では独自に研修牧場を設置し、酪農技術の教育を行なっているが必ずしも十分ではない。
  3. 新規参入者受入体制は十分でなく、参入情報と技術修得の場を新たに整備することが必要である。今日的には夫婦を対象とした実習時に、住居や生活費確保などの課題に対する解決が求められる。そのため、総合的実習が可能な場や仕組み、実習中の資金蓄積に対する援助体制の確立が農政の援助を含めて求められる。また、人材供給を効率的に行なうには、広域的な組織体制で望むことが有効であると考える(図1、2)。
  4. 参入経営の将来性について40頭規模での試算を行った。この規模でも長期的に成立する可能性があり、それには経営内容の改善が要求される。そのためより確実な技術の修得、長期的(ライフサイクル)視点を持った経済活動、初期段階の資金援助やより低利の制度資金の貸付などが経営の安定化を計る上で重要である(図3)。
  5. 担い手循環のためには農家自身が従来の家族間での継承にこだわらないなど、経営継承に対する意識変化が必要である。

【 成果の活用面・留意点 】
 個別経営で可能な対応、地域段階で行なえること、道段階で整備すべきことがある。
 ハードの整備よりはソフト面で参入受入のための環境整備を行なうことが重要である。

【 その他 】

 研究課題名:新規参入酪農経営の成立条件と地域支援のあり方
 予算区分 :道単
 研究期間 :平成6年度(平成5〜6年)
 研究担当者:金子 剛
 発表論文名:

         「平成7年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.430