有機質資材の窒素無機化特性区分と水稲に対する化学肥料代替性
【 要約 】 有機質資材中窒素の無機化の難易は、窒素含有率、C/N比を指標として示すことができる。窒素無機化速度が速く、生育初期から無機態窒素供給の可能な有機質資材ほど利用効率および化学肥料窒素代替性は高い。資材間では、魚・大豆・なたね粕>米ぬか>堆・厩肥>バーク堆肥の順に代替性は高く、魚・大豆・なたね粕で30%、米ぬかでは20%程度である。
北海道立中央農業試験場・稲作部・栽培第一科 連絡先 0126-26-1518
部会名 生産環境 専門 肥料 対象 稲類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 減化学肥料栽培では、化学肥料の代替として各種有機質資材が利用されているが、今後有機物資源を有効活用した安定(収量・品質)生産のためには、それら有機質資材の窒素無機化特性(無機化量・無機化パターン)の適正な評価とそれに基づいた施用基準を明らかにする必要がある。ここでは各種有機質資材の窒素無機化特性及び化学肥料窒素代替性(収量・食味を低下させない有機質資材の施用限度)を検討した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 有機質資材中窒素の無機化速度は、窒素含有率が高くC/N比の低い資材で大きいことが認められ、窒素含有率、C/N比を指標として有機質資材は4群に区分できる。
    A群:粕類(魚・大豆・なたね)、B群:米ぬか、C群:稲わら堆肥・厩肥、D群:バーク堆肥。
    これらの無機化速度はA>B>C>D群の順である。
  2. 有機質資材中窒素の水稲による吸収利用効率はA>B>C、D群の順に高い。収穫時窒素吸収量は、有機質資材区分ではA>B>C、D群の順に、代替率(施用窒素に占める有機質由来窒素の割合)では30>50>100%区の順に多く、収穫時吸収量に対する生育初期の吸収比率も同順である。各処理区のうち、A群の30%代替区における窒素吸収量、吸収推移は化学肥料区とほぼ同等である。
  3. 収量は、有機質資材区分ではA>B>C、D群の順に、代替率では30>50>100%区の順に高く、各処理区のうち、A群の30%代替区の収量は化学肥料区とほぼ同等である。タンパク含有率は代替率が高いほど高まる傾向にある。
  4. これらの結果から、土壌中での窒素無機化が速く、生育初期より無機態窒素供給力の高い有機質資材ほど窒素利用効率が高く(A>B>C>D群)、それらの化学肥料窒素代替施用限度(収量・食味を低下させない、施用窒素に占める有機質由来窒素割合の限度)はA群で30%、B群で20%程度と推定される。

【 成果の活用面・留意点 】
 湿田(グライ土、泥炭土)型土壌に限定する。

【 その他 】

研究課題名:クリーン農業実現のための土壌及び栽培管理技術の確立 (1)水稲に対する有機栽培技術の確立
予算区分:道費
研究期間:平成3〜7年
研究担当者:宮森康雄、今野一男
研究論文等:なし

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.332