低蛋白米生産からみた窒素分追肥法の評価
【 要約 】 良食味米生産の観点から現行窒素施肥法を15Nを用いて再評価すると、低蛋白米生産には過剰な基肥窒素量を避け、生育初期の窒素吸収を促進させる側条施肥等を組み合わせることが良く、窒素分追肥は北海道施肥基準内での幼穂形成期1週間後の分施の指導を継続し、止葉期追肥は高蛋白米が生産されることから中止する。
上川農試土壌肥料科・中央農試稲作部栽培第一科 連絡先 0166-85-2200
部会名 生産環境 専門 土壌肥料 対象 稲類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 本試験は重窒素標識硫安を用いた施肥試験を上川・中央農試圃場および現地農家圃場で実施し、窒素の動態と白米蛋白含有率の関係を解析する。これにより現行施肥法が白米蛋白含有率に及ぼす影響を解明し、もって良食味米生産の観点から分追肥法の再評価を行う。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 全層基肥窒素区の窒素利用効率は40%程度であり、白米蛋白含有率は施用量の増加とともに高まる(表1)。
  2. 側条施肥は窒素の利用効率が全層施肥よりやや優っているが、白米への分配率が低く白米蛋白含有率も低く良食味となる。また、表層施肥区の白米蛋白含有率は低いが、収量も全層施肥区より劣り、実用的でない(表1)。
  3. 幼穂形成期1週後の分肥は窒素の玄米生産効率が全層基肥と同程度であり、白米蛋白に対する影響は小さい(図1)。
  4. 止葉期追肥は窒素の玄米生産効率が低下し、また白米への移行率が高まり、白米蛋白含有率を著しく上昇させる(表2)。なお、出穂期以降の分追肥による白米への利用率は出穂期〜出穂後10日程度で最大となり、それ以降漸減する(図2)。
  5. 農試圃場(上川、上幌向)および現地農家圃場における試験結果を収量・食味の両面で評価すると、止葉期追肥は良食味米生産の観点から中止すべきと判断する。(表3)

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 止葉期追肥の中止は良食味米生産を指向する場合に限定し、加工用米などには従来の指導を継続する。
  2. 幼穂形成期1週間後の分施は継続とするが、その要否には気象条件および土壌窒素診断結果を十分に考慮する。

【 その他 】

研究課題名:低蛋白米生産からみた窒素分追肥法の評価北海道米の食味水準向上技術の開発-
予算区分 :道単
研究期間 :平成7年度(平成3〜平成8年)
研究担当者:後藤英次、野村美智子、三浦周、稲津脩
発表論文 :北海道産米の品質解析とその改善技術に関する研究 第16報15Nによる施肥窒素の利用率とその分配 日本土肥講要集、38、(1992)
      水稲に対する時期別窒素供給と食味特性の関係 日本土肥講要集、42、(1995)

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.335