水田における窒素フローの把握
【 要約 】 水田から環境へ流出する窒素は移植までがもっとも多く、この時期までに全かんがい期間の5〜8割の窒素が流出する。また、移植以降の窒素フローでは、水稲による吸収が大きな比重を占める。窒素フローの傾向は、減化学肥料栽培・有機栽培等、栽培形態間に差が認められない。側条施肥による施用窒素流出の削減傾向はみられる。
北海道立中央農業試験場環境化学部環境保全科 連絡先 01238-9-2001
部会名 生産環境 専門 対象 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 環境保全型水稲作を推進する上で、水田における窒素フローの把握が必要である。そのための基礎資料として、まず本道の一筆水田におけるかんがい期間中での窒素の流出および収支の実態を明らかにするとともに、窒素フローに対する肥培管理の影響および時期的変動を把握する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 標準栽培区における表面排水中からの全窒素の流出量は0.4〜2.1kgN10a-1(施用窒素量の5〜24%)であり、移植までの流出が全流出量の5〜8割を占めている。移植以降は水稲による窒素吸収量が大きく、環境への流出量は相対的に低くなる(図1)。
  2. 移植までに表面排水で流出したアンモニア態窒素量は、全層施肥を行っているほ場では0.1〜0.54kgN10a-1(施用窒素量の1〜8%、全窒素流出量の12〜51%)である。一方、側条施肥の場合では0.02kgN10a-1(施用窒素量の0.2%、全窒素流出量の4%)と低い傾向にある 。
  3. 降下浸透および畦畔浸透による窒素流出量は、それぞれ10a当たり0.1〜0.8、0.3〜1.0kgN(施用窒素量のそれぞれ1〜8、4〜11%)である(図2)。
  4. 窒素フローの傾向および環境への流出量では、減化学肥料栽培・有機栽培等、栽培形態の違いによる明確な差は認められない(表1)。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 本試験は一筆圃場を対象にしており、水田地帯全体には対応していない。
  2. 本試験はかんがい期間中における窒素収支を示したものである。

【 その他 】

研究課題名:農耕地の養分フローと環境への影響把握
予算区分:道単
研究期間:平成7年度(平成3年〜7年)
研究担当者:甲田裕幸、佐藤龍夫
発表論文等:なし

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.352