コムギ眼紋病の耕種的防除対策
【 要約 】 コムギ眼紋病は容易にほ場に侵入・定着する病害であるが、多発しなければ実質的な被害はない。したがって、汚染土壌や罹病麦稈の持ち込み防止、3年以上の輪作、茎数を過剰にしない栽培管理によって、本病の実害は回避できる。
北海道立中央農業試験場・病虫部・土壌微生物科・病理科
北海道立中央農業試験場・稲作部・栽培第二科
連絡先 01238-9-2001
0126-26-1518
部会名 生産環境 専門 作物病害 対象 食用作物類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 コムギ眼紋病は1983年に北海道で初めて発生が確認されたが、現在、小麦栽培地帯全域で認められており、非常に重要な問題となっている。この試験では、コムギ眼紋病の道内での発生実態や発生生態を明らかにするとともに被害解析を行い、その結果に基づいた総合的かつ恒久的な防除対策を確立することを目的とした。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 本病は、汚染土壌や罹病麦稈のわずかな持ち込みによって健全ほ場を容易に汚染するので、複数のほ場を共通の機械で作業する際は、可能な範囲で多発ほ場の作業を後にする(図-1)。
  2. 本病は、病茎率90%、発病度40(糊熟期)を越えると、病斑が茎を完全に取り囲む病茎が発生するため、減収と品質低下が生じ、小麦も倒伏しやすくなる。しかし、病茎率90%、発病度40以下であれば被害はない(図-2)。
  3. 非寄主作物を2年以上作付けすることにより本病の発病が軽減される。しかし、春まき小麦を含め2年以上小麦を連作すると再び発病が激化するので、本病の被害を回避するには、連作を行わず3年以上の輪作体系を維持することが必要である(表-1)。また、発生量によっては、交互作も本病の発病軽減に有効である。
  4. は種時期が早いほど、は種量が多いほど、茎数が過剰となり発病を助長する(図-3)。また、起生期の過剰な追肥も被害を助長するので、極端な早期は種や密播を避け、茎数に応じた適正な分追肥によって、茎数過剰にならないように栽培管理を行う。
  5. 夏期の10日間以上の湛水や田畑輪換は本病の発病軽減に有効である。

【 成果の活用面・留意点 】
 薬剤防除は被害が予想されるほ場にのみ、他病害の防除を考慮しながら実施すると効率的である。

【 その他 】

研究課題名:コムギ眼紋病の発生生態解明と防除対策
予算区分 :道費、受託、補助
研究期間 :平成7年度(平成1年〜6年)
研究担当者:角野晶大・竹内徹・児玉不二雄・田村修・田中民夫
発表論文等:

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.173