テンサイの主要病害虫に対するモニタリング手法の開発-テンサイ褐斑病・ヨトウガ-
【 要約 】 テンサイの主要病害である褐斑病、主要害虫のヨトウガの第1世代に対して防除時期、防除要否を判断するための簡易なモニタリング手法を開発し、適期、適防除(減農薬)のための指針とした。
北海道病害虫防除所・予察課 連絡先 01238-9-2080
部会名 生産環境 専門 作物病害虫 対象 テンサイ 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 褐斑病及びヨトウガはテンサイの重要な病害虫であり、薬剤散布は定期的なスケジュール散布となっていることが多い。これらの病害虫の的確な発生量を把握できるモニタリングの手法と防除開始時期を判断する基準があれば、効果的で効率的な防除が実施でき、減農薬栽培にもつながる。

【 成果の内容・特徴 】

  1. テンサイ褐斑病
    1. 最終的な被害は最終発病度が30を越えないことを目的とし、防除開始時期の発病株率を50%とした。
    2. 薬剤の残効期間は各薬剤で異なり、10日(3薬剤)、10〜15日(1薬剤)、15日(3薬剤)および20日程度(2薬剤)であった。
  2. ヨトウガ
    1. 防除時期を判断するための簡易なモニタリング指標として、被害株率が有効である。
    2. 第1世代の最終的な食害は防除開始時期を被害株率50%に達する時点とすることで、被害許容水準である食害程度25以下に抑制できる。
    3. 被害株率を指標とした適期防除により第1世代の防除回数を1回以下にすることができる

【 成果の活用面・留意点 】

  1. テンサイ褐斑病
    1. 本病の初発以降の発生動向を把握し、発病株率が50%に達した場合、速やかに薬剤散布を開始する。なお、調査は系統抽出法で50株(10株×5カ所)を選定し、調査間隔は5日とする。
    2. 散布薬剤の選定に当たっては、その特性を留意し、薬剤の効果が持続するような散布体系を構築する。
    3. 連作ほ場では本病の初発が著しく早く、発病も急激に進展する場合が多いので、適用は難しい。
  2. ヨトウガ
    1. 第1世代の防除開始時期を決定するための簡易なモニタリング手法として被害株率50%が利用できる。
    2. 簡易モニタリング手法を実行するための手順は以下のとおりである。
      1. 被害株率を被害発生初期(道央地帯で6月下旬)から5日間隔で調査する。
      2. 調査株は系統抽出法によって10株5カ所の計50株を選定する。
      3. 被害株率が50%に達した時点で防除を行う。

【 具体的データ 】

表1 薬剤の残効期間
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残効(日)    薬剤名(希釈倍数)
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10     マンゼブ(500)、銅(500)、ピリフェノックス(500)
10〜15 カスガマイシン・銅(800)
15     カスガマイシン(500)、ビデルタール(1000)、シプロコナ
     ゾール(3000)
20     ジフェノコナゾール(3000)、テトラコナゾール(1500)
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防除時期   無防除  慣行防除  株率50%
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食害程度
  1994年    75.6   19.7    24.7
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  1995年    65.4    5.9    10.0
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   図−2 被害株率を指標とした防除の効果(調査日は両年ともに7月25日)
                      (慣行区は2回の薬剤散布)

【 その他 】

研究課題名:テンサイの主要病害虫に対するモニタリング手法の開発
      (発生予察地域活用技術確立事業)
      (環境保全型防除要否判断基準確立事業)
予算区分:植物防疫事業費
研究期間:平成7年度(平成4〜7年)
研究担当者:堀田治邦、小野寺鶴将
発表論文等:なし

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.182