低アミロ小麦の簡易迅速検定法の開発
【 要約 】 オートアナライザーにより生麦のα−アミラーゼ活性の簡易迅速測定が可能となり、活性とアミロ粘度との相関は高かったことから、受け入れ段階の低アミロ小麦の仕分けに活用できる。また、低アミロ耐性品種開発のための検定にも適応できる。
北海道立中央農業試験場 農産化学部 穀物利用科 連絡先 01238-9-2001
部会名 流通利用 専門 加工利用 対象 小麦 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 低アミロ小麦とは粒内のα−アミラーゼによりでん粉が分解され、加工適性が大きく低下したものといわれている。低アミロ小麦と正常な小麦を混合すると、正常な小麦のでん粉も分解され、全体の粘度が大きく低下してしまう。したがって、受け入れ段階で低アミロ小麦を仕分けし、正常な小麦と区分して乾燥、流通させることが重要である。そのために、水分変異の大きな生麦を対象とした簡易迅速な低アミロ小麦の検定法を開発した。

【 成果の内容・特徴 】

  1. ホモジナイザーを用いることにより高水分の子実から容易にα−アミラーゼが抽出され、この抽出液の活性を水分補正することにより、アミロ粘度と比較的高い相関が得られた。
  2. オートアナライザー(AA)によるα−アミラーゼ活性の自動分析化を検討した(図1)。活性測定はCERALPHA法の分析キット(オーストラリア、Megazyme社)によったが、反応基質は規定の1/3に希釈した。オートアナライザーにより1時間に50点の迅速測定が可能となり、しかも手分析よりコスト低減(45円/点)が可能であった。
  3. 生麦のα−アミラーゼをオートアナライザーにより測定した結果、活性(UNIT)とアミロ粘度とは高い負の相関が得られた(図2)。アミロ粘度の仕分けを試みた結果、活性0.3未満を健全、0.3以上0.5未満を低アミロ小麦の危険性がある中間域、0.5以上をほぼ低アミロ小麦と推測できた(表1)。
  4. オートアナライザーを育種の検定法に利用する場合、0.2g程度の極少量で測定できまた一日当たり300点以上の分析が可能と考えられた。
  5. 受け入れ段階で低アミロ小麦の検定を行う場合の所用時間は、単純積算で22分(トラックからの試料採取5分、抽出5分、活性測定10分、計算・判定2分)であった(図3)。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 生麦のα−アミラーゼ活性測定によるアミロ粘度推測は成熟期以降(子実水分約40%以下)の試料を対象とする。
  2. 高品質小麦の流通のためには、中間域の小麦は健全域の小麦との混合を避け、別扱いとすること。

【 その他 】

研究課題名:道産小麦の品質向上試験(パート2)
      2.小麦アミロ粘度の変動要因解明と簡易検定法の現地適応検討
予算区分 :受託
研究期間 :平成7年度(平成4年〜6年)
研究担当者:中津智史
発表論文等:オートアナライザーによる小麦α-アミラーゼ活性の測定、日本食品化学工学会第42回大会講演集、p92、1995
      日本作物学会紀事投稿中

        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.339