金時類の煮豆特性に関わる品質(かたさ)の評価法
【 要約 】 金時類の煮豆に関する品質特性値として、物性測定機器(テンシプレッサー)を用いた子葉部および種皮部のかたさの測定条件を明らかにし、煮熟粒のかたさの標準的な範囲を示した。また、煮豆加工過程における種皮色の変化を明らかにした。煮熟粒のかたさの代替指標としては、煮熟増加比が活用可能である。
北海道立中央農業試験場・農産化学部・品質評価科 連絡先 01238-9-2001
部会名 流通利用 専門 加工利用 対象 豆類 分類 指導

【 背景・ねらい 】
 金時類の主用途は煮豆であるが、その加工適性に関与する品質特性については明らかとなっていない。そこで、金時類を対象として、煮豆の評価に大きな影響を及ぼすテクスチャー、特にかたさの評価法について検討を行う。また、煮豆調製過程における種皮色の変化および、品種または年次や栽培地の違いによる煮熟特性の変動を検討する。

【 成果の内容・特徴 】

  1. 煮豆の官能評価にはかたさの影響が大きいため、煮豆に対する原粒の品質特性としてかたさを取り上げ、物性測定機器(テンシプレッサー)による測定条件を明らかにした。また、プランジャーの種類を選択することにより、部位別(子葉部・種皮部)にかたさを測定できる(表1・図1)。
  2. 煮豆のかたさの官能評価値にはテンシプレッサーでの測定値との関連が認められるが、異なる品種間での比較では、同一品種間の比較よりも識別率が劣る(表2)。
  3. 煮豆加工過程での種皮色の変化としては、L*値(明度)は吸水により高くなり、煮熟および調味により徐々に低下する(図2)。a*値(赤味度)は吸水、煮熟、調味の過程で低下を続けるが、調味による変化は小さい。b*値(黄味度)は吸水後は高くなり、煮熟により低くなるが、調味後はわずかながら高くなる。また、種皮色と煮熟粒色との間には一定の関係は認められず、煮豆の色は種皮色を反映していない。
  4. 色流れ粒を用いて煮豆を調製した場合、煮豆色の平均値は正常粒と大きな差は認められないが、原粒種皮色の色むらが煮豆色のばらつきとして現れる。
  5. 品種間の比較では、「大正金時」、「十育B62号」は「北海金時」、「丹頂金時」に比べやわらかい傾向にあるが、子葉部と種皮部のかたさには品種により差異がある(図1)。また、年次や栽培地の違いによっても煮熟増加比やかたさには差が認められる。
  6. 「大正金時」の測定値から判断すると、煮熟増加比は2.3程度、子葉部かたさは5kgf/cm2程度、種皮部かたさは15〜17kgf/cm2程度が標準的な範囲であると考えられる。
  7. 原粒または浸漬段階において煮熟特性を推測することは困難であるが、煮熟増加比は煮熟粒のかたさに関与しており(図3)、煮豆特性の大まかな指標となり得る。

【 成果の活用面・留意点 】

  1. 煮熟粒のかたさ評価は、金時類の品質特性値として利用する。
  2. 品種、年次および産地等による煮豆特性の差異を把握する上で活用できる。

【 その他 】

研究課題名:豆類の加工適性向上試験
      1.煮豆等利用向け豆類の加工適性評価基準設定試験
予算区分:道費(豆基)
研究期間:平成7年度(平成2年〜6年)
研究担当者:加藤 淳・目黒孝司
発表論文等:加藤 淳・目黒孝司(1995):金時類の煮豆テクスチャーに与える原粒品質の影響、日本土壌肥料学会講演要旨集、42
        「平成8年度普及奨励ならびに指導参考事項」 P.341